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株価下落「ヒューリック」配当・優待を狙って買うのはアリ?ナシ?長期投資家が持つべき視点=佐々木悠

ヒューリック<3003>の株価が下落し続けています。24年の年初に1,648円をつけたのち、ズルズルと、約12%近く株価が下がっています。この会社は高配当銘柄としても有名であり、株主確定日は6月30日です。配当金やカタログギフトなどの株主優待に期待して投資する価値はあるのでしょうか?今回はヒューリックの事業内容を分析し、成長の可能性や株価下落の理由、そして現在の投資判断について考えてみます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

ヒューリックって何の会社?

ヒューリックは、不動産デベロッパーです。土地の購入、建物の設計・建設・販売や賃貸まで、様々な不動産関連ビジネスを行っています。

ヒューリック<3003> 日足(SBI証券提供)

ヒューリック<3003> 日足(SBI証券提供)

ヒューリックの事業は主に3つに分かれています。

  1. 不動産事業:各種デベロッパー業務
  2. 保険事業:損害保険や生命保険の代理店として保険を販売
  3. ホテル・旅館事業:THEGATEHOTEL、ビューホテル、ふふなどの運営

2023年12月期の事業別売上構成比を見ると、その約90%が不動産事業によるものです。

出典:マネックス証券

出典:マネックス証券

では、長期的な推移はどうでしょうか?

ヒューリック<3003> 業績(SBI証券提供)

ヒューリック<3003> 業績(SBI証券提供)

売上、経常利益ともに右肩上がりで成長しています。不動産業界は事業運営において借入金を活用するため、金融関連費用が反映された経常利益で業績数値を見ています。この成長は主に不動産事業によるものです。

出典:決算短信より作成

出典:決算短信より作成

では、不動産事業がどのように成長してきたのかを詳しく解説します。

ヒューリックの不動産事業の強み

不動産事業の売上を用途別に分けてみると、不動産売却による収益が全体の約75%を占めています。しかし、賃貸収入も長期的には成長しています。では、不動産売却と賃貸のそれぞれの特徴について解説します。

出典:決算短信より作成

出典:決算短信より作成

<不動産売却>

ヒューリックの不動産開発は中小のオフィスビル建設に特徴があります。三菱地所や住友不動産などの大手デベロッパーが大規模な開発プロジェクトや分譲マンションに強みを持つのに対し、ヒューリックは銀座、渋谷・青山、新宿東口、浅草などの魅力的なエリアに絞り込み、主要駅から徒歩3分以内の物件をターゲットにしています。このような収益力のある地域に集中することで、競合他社よりもスピーディーに不動産の売買を行っています。

ヒューリックのターゲットとする物件は収益性が高く、競合他社も欲しい物件です。その競争に勝てる要因の一つが意思決定の速さです。不動産所有者(ヒューリックに不動産を売る立場)も早く売却したいと考えているため、このスピードが大きな利点になります。会長の西浦氏は過去のインタビューで以下のように述べています。

なぜ仕入れることができるかというと、第一にスピードです。当社の場合、物件情報が寄せられてから2日で意思決定ができます。2日の間に物件を見て収益計算をして決断を下します。しかも金融機関との間で2千億円までならいつでも調達できる借り入れ枠があります。ですから決済の心配もない。そのため条件に当てはまる物件があれば、当社に真っ先に持ち込まれるようになりました。

出典:不動産業界で急成長を可能にしたヒューリックの経営戦略―西浦三郎(ヒューリック会長)- 経済界ウェブ(2018年2月7日配信)

ヒューリックは1957年にみずほ銀行(当時の富士銀行)の不動産業務を目的として設立されました。このつながりがあるため資金調達も比較的スムーズです。対象物件の情報獲得、資金調達、投資意思決定までのプロセスが競合他社に勝っています。「ヒューリックならすぐ決めてくれる」という信頼があるからこそ、不動産事業で成長を遂げてきました。

このスピード感は業績にも反映されています。当期純利益を総資産で割ったROA(総資産利益率)が競合他社よりも高い傾向にあります。購入した不動産を売却し、次なる投資につなげている結果と考えられます。

出典:SPEEDAより作成

出典:SPEEDAより作成

<賃貸収入>

ヒューリックは必ずしも販売用不動産による利益だけを狙っているわけではありません。賃貸収益を増やしたいという狙いがあります。ただし、この賃貸は住宅ではなく、オフィス賃貸です。住宅関連は人口減少リスクを考慮し、あえて力を入れていません。

中期経営計画の重点課題の中で、最初に述べられているのは「高品質の賃貸ポートフォリオの構築」です。

都心の駅近に物件を保有しているため、市場平均の坪あたりの平均賃料が20,000円前後であるのに対し、ヒューリックの平均賃料は25,000円を超えています。また、全国平均の空室率が6%前後であるのに対し、ヒューリックは1%以下です。

出典:統合報告書

出典:統合報告書

都心、駅近という好立地に加え、自社独自の耐震基準を設定し、耐震性の高い物件の比率を高めています。また、古くなった物件をリニューアル・イノベーションすることで不動産価値を高めるバリューアッド事業を推進しています。今期も多くの物件を建て替え工事する予定です。

出典:決算説明資料

出典:決算説明資料

この建て替えにより、賃貸可能面積の拡大や耐震・環境性能の向上、賃料水準の引き上げが期待できます。

Next: なぜ株価下落?配当と株主優待に期待して投資するのはアリかナシか

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