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株価下落「ヒューリック」配当・優待を狙って買うのはアリ?ナシ?長期投資家が持つべき視点=佐々木悠

株価下落の理由

ヒューリックの株価は全体的に好調で成果が出ているにもかかわらず下落しています。その理由を考えてみましょう。

ヒューリックの株価は主に2024年に入ってから下落傾向にあります。

ヒューリック<3003> 週足(SBI証券提供)

ヒューリック<3003> 週足(SBI証券提供)

ヒューリックは12月決算ですが、翌月末にその決算を発表します。2024年1月末に発表された今期の通期の見通しは、前年比経常利益+4.8%、最終利益+3.6%増の見込みです。純利益のアナリスト予想平均は950億円だったのに対し、980億円の見通しですから、市場の期待を裏切ったわけではありません。

また、4月末に発表された2024年12月期第1四半期決算では、経常利益と当期純利益が前年同期比約−30%となっていますが、これは販売用不動産の売却を4月以降に先送りしたためと説明されています。一方で、賃貸収益の確保を優先するために売却を抑制している動きもあり、これが利益の押し下げ要因となっています。

私は第1四半期の決算では、ある程度自らの意思で利益を押し下げているようにも感じます。現段階での下方修正等も特に発表されていないため、第2四半期以降に業績が回復することを期待しています。

また、業績以外の要因としては、金利上昇圧力の影響も考えられます。不動産デベロッパーのビジネスモデルにおいて銀行からの借入れが重要であり、借入金利の上昇が利益を圧迫するリスクがあります。このリスクを織り込んで株価が下落している可能性があります。

さらに、株主構成にも原因があるかもしれません。ヒューリックの株主構成を見ると、実質的な最大株主は明治安田生命保険ですが、その次に損害保険ジャパンがあります。現在、損保業界では政策保有株の売却を進める流れがあります。損保ジャパンは2030年までに政策保有株を売却すると述べていますが、これがヒューリックの株価を押し下げる圧力になっている可能性があります。

以上のような複数の要因が関係し、ヒューリックの株価が下落していると考えられます。

配当と株主優待に期待して投資して良い?

ここまでをまとめます。

  • 中長期的な成長要因は、都心×駅近に不動産の絞り、意思決定のスピードを上げたこと
  • 今後の戦略は、賃貸収益の収益力を高めることで、継続的に安定した成長を目指す
  • 目先の株価下落の主な要因は、今期1Q決算を見た影響に加え、金利上昇圧力と大株主の顧客圧力があると考えられる

以上が、ヒューリックの成長要因と株価が下落している理由であると考えます。

リスクについても触れておきます。

金利上昇に伴い販売用不動産の売却益が減少すること、景気変動によるオフィス空室率の上昇(それに伴う不動産価格の急落)などが挙げられます。

特に景気変動関連のリスクには注意すべきです。リーマンショック前後の当期純利益の推移を見ると、08年12月期は19億円の黒字だったものが、09年はマイナス70億円の大幅赤字に転落しています。

この時に起こった現象は、不況で不動産の買い手がいなくなり不動産価格の下落が起きました。ただでさえ売上が縮小することに加え、収益性の悪化に伴い不動産価値が下落し減損が発生する悪循環に巻き込まれました。

したがって、不動産販売を主たる収益源としている場合、ハイリスクなビジネスと言えます。ヒューリックはそれを防ぐために安定的な賃貸収入を増やそうとしているわけですが、景気悪化時の不動産に関するリスクはしっかりと認識しておくべきでしょう。

ヒューリックに投資する上で、配当金と株主優待に期待する方が多いでしょう。

2024年6月21日終値における現在の配当利回りは3.62%です。過去10年間の配当性向は40%前後を維持しており、利益成長とともに増配しています。

出典:マネックス証券

出典:マネックス証券

株主優待は300株以上保有することが条件であり、保有年数によって優待内容が変わります。保有年数3年未満であれば3,000円相当のカタログギフト、3年以上継続保有であれば6,000円相当のカタログギフトが送られます。現在の株価は約1,400円ですから、300株保有するには約40万円必要です。優待利回りは約1.5%(3年以上保有の場合)です。これと配当利回りの3.6%を合わせると、配当と優待で約5%近い還元を受けることができます。

なお、2025年12月以降の還元は2年以上保有で6,000円相当と変更されています(2年未満は廃止)。金利上昇や大株主の売り圧力リスクと、この魅力ある還元を比べ、還元の方に魅力を感じるのであれば、投資を検討しても良いと考えます。

配当や優待の原資となる企業の業績も、一時的な利益の低下は見られますが、長期的に見ると安定しています。これも魅力の一つです。これらの情報をもとに投資判断をしてください。


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image by:Ned Snowman / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年6月21日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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