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小林製薬、“紅麹”で株価下落後に急回復…買いの好機か?長期投資のプロが徹底分析

小林製薬は「紅麹コレステヘルプ」というサプリメントを摂取した方で5名が亡くなられたという報告が出ています。このニュースを受けて小林製薬の株価は一時大きく下がったのですが、足元では逆に大きく上がっています。小林製薬はNISAの買い付けランキングで上位に入っていて、注目が高まっています。今回は、当社アナリストの佐々木と対談する形で小林製薬について深掘りしてみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

紅麹サプリ問題

栫井:株価の話の前に、小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」の問題がどのようなものだったのか教えてください。

佐々木:このサプリメントを摂取した人から腎疾患などの健康被害が出ていることが一番の問題となっています。

栫井:特に“紅麹”が取り沙汰されていますが、紅麹がそもそも問題になっているんでしたっけ?

佐々木:実はそうとも言い切れなくて、小林製薬は生産した紅麹の8割を他社向けに出していて、小林製薬の紅麹を使用した他社製品において今のところ健康被害は出ていないので、紅麹ではなくこのサプリメント自体の問題である可能性が高いと考えられています。

小林製薬<4967> 週足(SBI証券提供)

小林製薬<4967> 週足(SBI証券提供)

“あったらいいな”をカタチにしてきた小林製薬

栫井:小林製薬にサプリメントのイメージはあまり無かったのですが、売り上げに占めるサプリメントの比率はどのくらいなのでしょうか。

佐々木:こちらが小林製薬の統合報告書です。

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出典:小林製薬統合報告書

国内のカテゴリー別売上構成比を見ると、医薬品や消臭剤の割合が大きくなっています。サプリメントは「食品」のカテゴリーに入ると思われ、売上の6.3%となっています。

栫井:サプリメントは主力製品ではないということですね。

佐々木:その通りです。

栫井:今、株価が戻ってきているのは、サプリメントは主力製品ではないので影響は小さいと見られているからかもしれないですね。

佐々木:その可能性もありますね。

栫井:まだはっきりと言えるものではないとは思いますが、直接的にはどれくらいの実害が見込まれるのでしょうか?

佐々木:発表の段階では、回収費用や損害賠償などで18億円くらいを見込んでいるとのことでしたが、ここからさらに被害が拡大していくということになれば、具体的な数字はまだ判断できないと思います。

栫井:発表の18億円からある程度膨らんで100億円になったとしても、2022年の営業利益が228億円ということで、この問題自体が財務的には大きな問題ではないということですね。一方で考えられるのは風評被害ですよね。これだけ小林製薬の名前が報道されていると不買運動が起こったりする気がするのですが、小林製薬で一番売れている商品は何でしょうか?

佐々木:カテゴリーで言うと医薬品や消臭剤が主力となりますが、医薬品で具体的な商品名を挙げると、「のどぬ~るスプレー」「熱さまシート」「ハナノア」といったところになります。

栫井:みなさんお世話になっていることも多いかと思う商品ですが、名前の付け方が上手いですよね。

佐々木:そうですね。マーケティングが上手だなと感じます。

栫井:私も小林製薬はドラッグストアに置いてあるようなアイデア商品を多く出している印象があるのですが、近年の業績はどうなっているのでしょうか?

佐々木:実はあまり良くありません。

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出典:マネックス証券

近年の業績を見てみると、大きく利益が伸びていた場面はあったのですが、そこからは横ばいという印象です。

栫井:2016年から2018年にかけて大きく利益が伸びていますがこれはなぜでしょうか?

佐々木:2016年12月期に関しては、その直前の決算期が2016年3月で、9か月分の数字になるので除外しますが、2017年12月期から2018年12月期の伸びは何なのかということですよね。

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出典:マネックス証券

業績のグラフでは伸びているように見えますが、営業利益の成長率は14.7%ですし、利益率も14.62%から15.70%になっただけで、爆発的に伸びたかというとそういうわけではないという前提があります。その期間に何があったかというと、新商品が投入されて、それが売り上げに貢献したということになります。

栫井:なるほど。要するに安定しているということですかね?利益が急に上がっているように見えるということは、その前と後ろがきれいに横ばいなっているからであって、一度ヒットした商品がずっと売れ続けているのではないでしょうか。のどぬ~るスプレーや熱さまシートなんかは一度市場に投入すると受け入れられてみんなそのまま買い続けたという商品かなと思います。そういう意味では、伸びはそれほどないものの安定した企業と言えそうですね。

佐々木:その通りです。市場を見ると国内の売上の方が圧倒的に高くて、そう考えると国内の市場って良くも悪くも成熟市場なのでそのあたりの安定感はあると思います。

栫井:23.5%は海外の売上なんですね。海外にはどんな商品を投入しているんですか?

佐々木:国際事業の主力商品は、「カイロ」「熱さまシート」「アンメルツ」などとなっています。

栫井:日本で売られている商品を海外にも展開しているということですね。

佐々木:圧倒的に国内の売り上げが大きいですが、一部商品を世界でも売っているという状況です。

栫井:面白い会社だなという印象はありますね。ちなみに社長が小林さんですが、同族経営でしたっけ?

佐々木:株主構成を見ると、大株主が小林さんで、その方が社長です。

栫井:ちなみに私は同族経営が悪いとは思っていなくて、ちゃんとポリシーを持って経営しているのであればむしろ変にサラリーマン社長の会社よりも良いと思っています。小林製薬は『“あったらいいな”をカタチにする』のスローガンを実現してきた会社で、ここからは私の意見ですが、今回の紅麹サプリメントの事件は管理体制が行き届いていなかった可能性はあるにしても、少し不運な面は否めないと感じているのですが、佐々木さんはどう思いますか?

佐々木:そうですね、私は逆にこの『“あったらいいな”をカタチにする』のスローガンが認知の元となっている一方で、今回のように健康被害が出てしまうとこのスローガンも使いにくくなるのかなと。「あったらいいな」よりも「使わなきゃよかった」の認識が広がってネガティブな影響も大きいのではないかと思います。

栫井:サプリメントの分野は得意分野ではなかったと思うんですよね。基本的には体の外側に使う商品が多いと思います。それに対して“機能性食品”という体に摂取するという、得意分野ではないもののアイデアを形にするということで一つのジャンルとしてやってきたことが裏目に出た部分があったのかなという気がしています。

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