工作機械メーカーであるDMG森精機<6141>について詳しく解説していきます。同社は先日10月30日に決算を発表し、同時に業績の下方修正を行いました。その結果、翌日には株価がストップ安になるなど、株式市場を大きく騒がせています。
この下方修正を受けて、投資家の間では意見が分かれています。すぐに損切りすべきだという声がある一方で、下方修正の理由が一過性のものであれば、むしろ今が買い時であり、特に配当利回りが4%を超えている点を評価する声もあります。
DMG森精機の足元の状況、下方修正の具体的な理由、そして長期投資の観点から見た将来性について詳しく掘り下げていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
DMG森精機の事業特性:景気敏感株としての顔
<株価と業績の推移>
直近約20年間の株価推移を見ると、DMG森精機の株価は非常に乱高下が激しい傾向にあります。

DMG森精機<6141> 月足(SBI証券提供)
これは特定のテーマに乗った急上昇や急下降だけでなく、主にファンダメンタルズ、つまり業績に連動する形で動いているためです。
実際の売上、特に営業利益の推移を見ても、その変動が激しいことがわかります。この業績や株価の動きから、DMG森精機はいわゆる景気敏感株(シクリカル株)であると理解できます。同社の事業が景気の動向に左右されやすいため、景気のトレンドやネガティブなトピックが市場の期待値に強く反映され、株価の上下動を引き起こします。
<工作機械メーカーとしての役割>
DMG森精機は一言で言えば工作機械メーカーです。工作機械とは、世の中のあらゆるものを作るための元となる機械、部品を削ったり切ったりしながら作る機械を指します。
提供される製品は多岐にわたります。
- 航空機向けには、タービンディスクなどの部品を作るための五軸加工機
- メディカル向けには、関節用のプレートを作るための複合加工機
- 半導体業界向けには、複雑な形状をした半導体製造装置の部品
そのため、顧客企業は多種多様な業界・業種にわたります。精密半導体メーカー、金型メーカー、航空機器メーカー、宇宙産業、EV(電気自動車)向け、メディカルなどが主要な顧客です。
<グローバルな拠点と業界内の位置>
DMG森精機はドイツの会社を子会社化した背景もあり、顧客企業はグローバルにわたります。受注構成比を見ると、欧州・トルコ地域(33%)、ドイツ(22%)、米州(22%)と、先進国に顧客が集中していることが特徴です。日本は11%程度であり、中国やアジアの比率は比較的低くなっています。
生産拠点も、ドイツ(39%)と日本(35%)が中心であり、約6割近くが欧州(ドイツ、ポーランド13%、イタリア7%など)で占められています。
工作機械メーカーの業界シェアにおいて、DMG森精機はドイツのトルンプ社に次ぐ業界第2位であり、リーダー格の企業です。
下方修正の真相:納期遅延を引き起こした3つの要因
今回、10月30日の決算発表に伴い、営業利益の通期見通しが380億円から180億円へと半分以下に大きく下方修正されました。ストップ安を引き起こした主な理由として、以下の3つの要因が挙げられています。
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