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NISAで人気1位「NTT」株は買いか?いま投資するメリットとリスク、長期投資家が期待する理由=栫井駿介

今回はNTT(日本電信電話)<9432>を分析します。なぜ今NTTを取り上げるのかというと、NISAの週間買付額ランキング(成長投資枠)の2024年4月1日~4月5日の週で1位となり、注目度が高まっているからです。これは瞬間的な話ではなく、週間保有残高でもJTに次いで2位となっています。株式分割を行って、単元が175円となり、100株買っても17,500円と非常に安くなったということで、多くの個人投資家が買っていると思われます。新NISAが始まるという絶好のタイミングでの株式分割だったのではないかと思います。私は以前からNTTは初心者にとって最適な銘柄だと紹介していました。おすすめの理由としては、何よりリスクが小さいことが挙げられます。とはいえ、企業においてリスクが全く無いということはなく、NTTにももちろんリスクはあります。今回は、NTTのプラスとマイナスの両面から改めて解説します。足元では株価が軟調になっていて、不安になっている方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひこれを読んで心を落ち着かせていただきたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

NTTが人気のワケ

NTTを買っている人がなぜこれほど多いかというと、やはり知名度が高いことが挙げられます。
また、リスクが小さいこともありますが、その理由として大きく2つあると思っています。

1つはビジネスリスクが小さいということです。
携帯電話や固定電話の通話料がサブスク収益として毎月入ってくることになっていて、これが盤石なキャッシュフローとなります。

もう1つは自己株式取得を積極的に行っていることです。

NTT1.png

出典:NTT

NTTの時価総額は約15兆円ですが、この20年ほどの間になんと5兆円もの自己株式取得を行っています。

自己株式取得を行うとEPS(1株あたり利益)が大きくなります。

企業を分割したものが「株式」であり、自己株式取得を行うと、企業全体の利益はそのままで株数が少なくなり、1株あたりの利益(EPS)が大きくなります。

実際にNTTの1株あたり利益の推移を見ると、2014年~2024年の10年間でおよそ3倍にもなっています。
その間、営業利益としては1.2兆円から1.9兆円にしか増えていません。

事業はそこまで成長していないものの、株価に影響を与える1株あたり利益は3倍に伸びているということです。

日本電信電話<9432> 月足(SBI証券提供)

日本電信電話<9432> 月足(SBI証券提供)

それにより株価は20年前からすると約4倍にも伸びていて、特に近年の上昇が著しいです。

NTTは成長は緩やかながら、自己株式取得や、最近はNTTドコモを子会社化するなどして株価を伸ばしてきています。

株価に関して言うと、2024年に入って急に大きく上がったのはやはり新NISAで個人投資家が買ったことによるものだと思われ、そこからすると下がってきているのですが、他の銘柄と比べると緩やかなもので、長期で見ると基本的には右肩上がりになっていて、大きなリスクが発生しているわけでもありません。

何も問題が無くても株価は下がることもあり、今の下落に不安を感じる必要は無いでしょう。

もちろんNTTが100%大丈夫な銘柄ということではありません。
未来に何が起こるかは分からないですが、分からない中でその会社を理解することで不安を和らげることができます。

装置産業というビジネス

NTTは基本的に装置産業です。

NTTはまず電話回線を張り巡らせました。
昔は電話を持つ人は少なかったですが、やがてみんなが電話を持つようになりました。

最初に回線を行きわたらせるために資金を投じ、利用者が増えるとともに収入が増えていく、キャッシュフローで言うと、最初に大きくマイナスになってのちにプラスが大きくなっていくというビジネスモデルです。

1985年のNTTが上場した当初はやはり回線を張り巡らせるのにお金がかかって財務状況が良くなかったのですが、その後回収機関に入って利益が出るようになりました。

もっと大きいのは携帯電話です。

基地局をたくさん作り、1人1台は携帯電話を持つ時代となった今は回収期間にあたります。

NTT3.png

出典:NTT

収益状況を見ても一目瞭然で、営業利益の6割はNTTドコモとインターネットのNTTコミュニケーションズです。
そこから入ってくるサブスク収益はもはや盤石のものとなっています。
しかももう投資はおおよそ終わっているので、黙っていてもお金が入ってくるという状況です。

だからこそ安定しているわけですが、成長には上限があります。

さすがに携帯電話の普及がこれから増えていくという時代ではありませんし、どちらかというと価格競争に入っています。
各社格安プランを用意して、携帯1台当たりの料金は下がってきている状況です。

Next: 足元の株価軟調は問題なし?装置産業にも3つのリスク

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