装置産業のリスク
<回収できないリスク>
装置産業の一番のリスクは、大きくお金を投じたにもかかわらず収入があまり入ってこないことです。
投資した分が回収できず、累積損失が重なってお金が苦しくなっていきます。
これがまさに今の楽天モバイルの状況です。
基地局の建設にお金を投じたものの利用者が増えず、どんどん苦しくなっています。
固定電話や携帯電話に関しては今さらこのようなことは起こりませんが、今NTTが大きな投資をしようとしているのがデータセンターです。
NTTの中期経営計画には、5年間で8兆円を成長分野に投資するとあります。
時価総額が15兆円の会社が8兆円の投資ということで、これがもし水の泡となればダメージは大きいということになります。
8兆円の投資が全て新規分野にというわけではありませんが、投資額が50%増ということで、かなり攻めの姿勢であることは確かです。
攻めの姿勢の中で特に大きいものがこのIOWN構想です。
NTTの光技術を使って、データの伝達や半導体などをより効率化しようというアイデアです。
この技術をNTTは持っているとされていて、それを確立するためにインテルなど世界の様々な企業と連携してNTTを軸とした世界展開を目論んでいます。
これを実現するための8兆円の投資ということです。
企業が成長する上ではある程度のリスクは必要となりますが、一方でこのデータの分野は常に最新鋭の競争が起きているところでもあり、この競争に勝てなかったということになると8兆円の投資が無駄になってしまうので、携帯電話や固定電話、ひかり通信の料金を得られている今の安定した状況からすると少しリスクが上がっているということは頭に置いておくべきだと思います。
もちろん成長のためには必要なことでもあるので、両面で考える必要があります。
<災害リスク>
データセンターに投資するようですが、地震等のリスクもあります。
建設したものが物理的にダメになってしまいますし、世界で考えると、地震国のデータセンターを使うことに後ろ向きな話が出てくる可能性もあります。
<“負の遺産”化>
ほとんどの人が携帯電話を使っているので、固定電話が“負の遺産”になってきているところもあります。
普通の企業であれば、あまり使われていないところからは撤退してより収益性の高いところに集中させることになるのですが、NTTではそれが簡単にできない事情があります。
『NTT法』があるからです。
NTTは元々電電公社という国の機関であったために法律に縛られています。
NTT法がある限り、NTTには「ユニバーサルサービス」というものが課されています。
日本中にあまねく電話網を張り巡らせなければならず、公衆電話など収益性が無いものも担保しなければならないという義務を負っています。
固定電話は解約が進むものの、コストはほとんど変わらないので赤字が広がっていくことになります。
2045年まで続けるとしたら、累積損失が1.9兆円にものぼるということです。
NTTはこのインフラを維持し続けなければならない限り、損失を垂れ流してしまうというリスクがあります。