とある中学校の修学旅行において、出発を来週に控えた段階で、貸し切りバスが手配できなくなり、旅行代理店が謝罪する事態となっている……との保護者のSNS投稿が、大いに波紋を呼んでいるようだ。
中学校の修学旅行がピンチ。
貸切バスが手配できなかったんだと。来週なのに…
理由は、バスの運転手さんが確保できなかったこと。
2024年問題、こういうところに出るのか。 pic.twitter.com/Geez1pzLY4— 町田のマチ子さん (@SOLzGcuxFGEmujL) May 15, 2024
投稿によれば旅行代理店は近畿日本ツーリストのようで、なんでも行程の1日目に組み込まれていた貸し切りバスでの移動に関して、ドライバー不足を理由に運行会社から“お断り”の連絡が先日あったとのこと。
急遽代わりのバス会社を探したものの、直前だったということもあってか手配することができなかったようで、結局貸し切りバスでの移動を変更せざる得なくなったようである。
旅行代理店側は、計画変更によって発生した差額は、修学旅行後に返金するとしたうえで、「今後は同じような事を繰り返さないように、バス会社を始め関係機関の手配には、慎重に進めさせていただきます。」と、保護者向けの書面で謝罪をしている。
修学旅行への対応のため高速バスが運休になるケースも
今年の4月1日から運送業などで始まった時間外労働の上限規制。このいわゆる2024年問題の影響が、もともと高齢化やコロナ下での離職が増えたことによる運転手不足に喘いでいたバス業界にも及ぶ格好に。
なんでもバス運転手に関しては、それまでの賃金水準の優位性もすっかり薄れたこともあり、このところはタクシーや物流業界への流出も相次いでいるとのこと。その結果、全国各地の路線バスではこの4月以降に減便、あるいは路線廃止が相次ぐこととなり、利用者からは不満と不安の声が多くあがる状況となっている。
いっぽうで、バス運転手の不足は修学旅行などの観光バスの円滑な運行にも、影を落としているよう。例えば富山県を営業エリアとする富山地方鉄道では、5月中旬から一時的に増えるという修学旅行の需要に対応するために、その時期に県内を発着する高速バスなどを60本ほど運休することを決めるなど、玉突き式で影響が出ているようなのだ。
このように、運転手のやりくりには相当苦慮しているというのが、昨今のバス会社の実情なのだが、とはいっても修学旅行の予定をバス会社側が、直前のタイミングになって断ってくるというのは、なんとも異例な話。
というのも修学旅行といえば、例えば3年次で行くとすれば、その前年には大まかな行き先などはすでに決まっており、それに伴い宿泊施設や移動手段の手配に関しては、担当の旅行代理店によって早々に行われるというのが常。
例のバス会社にも、通常の流れなら相当早いタイミングで予約が入っているハズなのだが、それを直前になって断るというのは、例えば運転手らが何らかの感染症に集団で罹ってしまったなどの不測の事態がない限り、仁義的にも許されないといったところだろう。
SNS上で渦巻く旅行代理店への疑いの視線
しかしながらこの件、SNS上などの反応を見てみると、旅行代理店側に問題があったのではないか……といった見方が大勢を占めており、なかでも多いのが「旅行代理店側がバスの手配を忘れていたのでは…」という説。
最近だと2023年に、さいたま市内にある小学校の校外学習を担当した旅行代理店の職員が、バスを手配し忘れた自らのミスを隠蔽するために、小学校に脅迫の手紙を投函し校外学習を延期させたとして、威力業務妨害の疑いで逮捕される事件が発生するなど、度々起きている印象がある旅行代理店による不手際。
それだけに、今回も同様に旅行代理店側が手配をうっかり忘れてしまい、そのことを事もあろうか“2024年問題”にかこつけて隠蔽しようとしているのでは……との憶測が広がっているようなのだ。
修学旅行なんて一年前から予約してんのに昨今の運転手不足によりバスが確保できなかったは嘘だわ。どうせ近ツリの担当者がバスの手配忘れてて直前に気付いたパターンでしょ https://t.co/IOl19sZazQ
— 栗松だいちゃろ@投資で1000万突破(したい) (@daigoro_san) May 16, 2024
修学旅行ってふつう1年前に手配するけど、土壇場になってバス会社が断って来たってホントかな?
さいたま市では旅行会社が実はバスの手配を忘れてて、担当者が小学校を脅して誤魔化そうとした事件があったな…。https://t.co/0vxa2Xy1e6 https://t.co/LURdCCzMCI— 吉田一郎 (@no_saitama) May 16, 2024
さらにSNS上には、旅行代理店側がこれまでバス会社に対して値切り倒してきたことへの報いが、ここに来て現れたのでは……といった見方も。昨今のバス運転手の不足は、ここ十数年来における待遇悪化の流れも大いに響いているとされるわけだが、旅行代理店によるダンピングもその原因となったのでは、というのだ。
旅行代理店が貸切バスの運賃をダンピングさせまくった結果です。2024年問題は関係ありません。100%旅行代理店のせいです。 https://t.co/DstKuOLFJl
— 川鍋 新一朗 (@annexttc) May 16, 2024
これ近ツーが値切り倒したら価格の合うバス会社の空きがなかっただけか、もしくは近ツーの営業がバスの手配を忘れてただけちゃうん。
地元の市バスは交通局時代に観光バス事業もやってたのは修学旅行や遠足への対応とか聞いたことあるな。 https://t.co/2KNmD238dZ— 風早比古命(犬一坐/無格) (@T_Kazahaya) May 16, 2024
このように旅行代理店側に対する疑いの視線で溢れているといったSNS上なのだが、今回の近ツーに限らず旅行代理店といえば、コロナ禍で苦境に陥るなかで、ワクチン接種会場やコールセンターの運営などの委託事業を各自治体から請け負ったものの、人件費などの過大請求を行っていたことが続々と露見。業界全体が丸ごと評判を落とす格好となっていただけに、こういった反応が飛び交うのも致し方無いといったところか。
ちなみに今回のケースでは、バスでの移動を予定していた行程を、電車移動に置き換えることができた模様。修学旅行の中止という最悪の事態は避けられたようでなによりだが、その反面で旅行代理店業界に対する世間の“疑心暗鬼”が相当に根深いことが、如実に表れることとなった格好だ。
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