熊本地方を中心に、大分、島原にまで、大変な地震が起こりました。地震はいつも突然です。現在の地震学では、天気予報のような予知はできません。後述する活断層型や海溝型の発生確率で、大雑把に示されているだけです。(『ビジネス知識源』吉田繁治)
活断層型大地震に遭う確率は、交通事故でケガをする確率に近い
地震は、天気予報のようには予知できない
熊本は、私も訪れることが多い地域です。東日本大震災のとき(2011年3月11日)、地元の人は「熊本には大きな地震はありませんもんね」と言っていました。
過去に最大の被害をもたらしたのは、明治22年7月(1889年)に起こったものでした。マグニチュード6.3:飽田郡(あきたぐん)が中心です。死者20人、負傷者52人、家屋の全壊228戸と記録されています。127年前です。明治時代の曽祖父(おじいちゃんの父母)の時代で、4代前なので、現存世代の記憶にはありません。
甚大な被害をもたらした阪神・淡路大震災(1995年1月17日)、そして記憶に新しい東日本大震災(2011年3月11日)のときも、予知も予感もなかった。阪神・淡路大震災のときにも、「70年間、大きな地震がなかった。関西では地震は起こらない」と言われていたことを記憶しています。
大きな地震は、過去に起こった間隔から、それを延長して「向こう30年の発生確率は○○%」と言われるだけです。
地震の原因は、地下深くにあるプレート(岩盤層)の移動によるハネ上がりです。それがいつどれだけ動くか、そして、どれだけ動くと、どこがハネ上がって大地震になるのか。プレートは様々なので、未だにわかりません。
大気の動きは観測できるので「天気予報」になっていますが、海底深い海溝や地下数十kmの状況は見えない。起こったことから、「多分こうであろう」と推測しているのが地震学です。
また、地震を理解するには、「海溝型」と「活断層型」に分ける必要があります。東日本大震災をもたらした地震は、大きなプレートが動く「海溝型」です。
80年から200年のサイクルで起こる海溝型の地震
地球上は、14枚から15枚の大きなプレート(厚さ約100kmの岩盤)でできています。大陸型プレートと海洋型プレートがありますが、海洋型の方が密度が高くて重い。このため大陸型プレートの下に入り込む。14枚から15枚の大きなプレートに属し、そこから分けると、40枚程度のプレートが地球を形成しているとされています。
この中で、日本列島付近は下記のような状態です。
- 列島を支える陸側の大陸型プレート(板状の岩盤層)に対して、
- 東側に太平洋側プレートがあり、
- 南側にはフィリピンプレートがあって、2つの海側プレートが沈み込んでいる。
海側の重い太平洋プレートは1年間で8〜9cm、フィリピンプレートは4〜5cm移動しているという。つまり、100年で8〜9m(太平洋プレート)、4〜5m(フィリピンプレート)の移動になります。
陸側と海側とプレートの移動エネルギーが溜まって起こるのが、海の底が揺れて津波をともなうことが多い「海溝型地震」です。
プレートが約100年で5m移動してズレが起これば、岩盤がゆがみます。厚さが100kmもある岩盤のゆがみには、巨大なエネギーが蓄積されます。それがハネ上がるときが、巨大な地震です。
このため、海溝型の地震は、80年から200年サイクルで起こるとされています。岩盤の1年間での移動速度があるため、海溝型の大地震は「周期化」すると言えます。
陸側のプレートと海側のプレートの移動とハネ上がりによって起こるのが、深い海溝やトラフ(最大水深7000m以下の盆地)で発生する地震です。なお、トラフとは盆地の意味です。
海溝型地震の例:東北地方太平洋沖地震
大きな津波をともなった東北地方太平洋沖地震(2011年3月)は、仙台の東沖約70kmの海底を震源とするものでした。震源域は広大で、岩手の沖から茨城の沖まで、南北500km、東西200kmになります。また後述する南海トラフは、大陸プレートの下にフィリピンプレートが潜り込んでできていて、伊豆から四国の沖に広がっています。トラフとは7000m以下の海の溝のことで、7000m以上のことを言う「海溝」よりも浅いものです。
最大震度は7で、マグニチュード(以降、Mと表記)は日本史上最大の9.0とされました。宮城、福島、茨城、栃木では震度6を記録しています。
犠牲と被害が大きくなったのは、津波がともない、福島原発の過酷事故があったためでした。死者・行方不明が1万8455名(2016年3月時点)、建物の全半壊40万戸、ピークの避難者が40万人とされています。5年が過ぎた現在も17万人もの方々が、避難生活をおくられています。
政府は、物的な設備の損害規模を、16兆円から25兆円としています。自然災害の被害規模では世界史上1位ということです(世界銀行より)。