回転ずしチェーン大手のくら寿司が、大手回転ずしチェーンで初となる銀座エリアへの出店を果たしたことが大きな話題になっているようだ。
銀座の商業施設「マロニエゲート銀座2」の7階に25日オープンしたくら寿司の新店。店内には242席あり、すしを載せる回転レーンは全長123メートルと、同社では最長となるとのこと。グローバル旗艦店と位置づけられたこの店舗では、店内に浮世絵や提灯を飾り、すしと天ぷら、団子を作る様子が見られる屋台も設けられているという。
くら寿司の地域別価格のうち、今回の銀座店は最も高い都市型店舗の設定で、1皿税込み150円から。さらにクルマエビなど3貫1,200円の限定品も販売するという。
国内より海外出店が多くなっているくら寿司
コロナ禍における外食産業のなかでは、比較的勝ち組とされてきた回転すし業界。それでも原材料価格の高騰などにより利益が大いに圧迫され、さらに2023年にはいわゆる“迷惑動画禍”が同業界を直撃する事態に。くら寿司でも、しょうゆ差しを舐める金髪男の動画が拡散し、その対応に追われることとなった。
しかしながら、そんな苦境続きのくら寿司も、業績のほうはおおむね右肩上がりといった状況で、昨年12月に発表した令和5年10月期連結決算によれば、売上高は前期比15.5%増の2114億円と、3期連続で過去最高を更新。ちなみに売上高が2000億円を超えたのは、昭和52年の創業以来、初めてのことだったという。
売上好調の原因としては、すしの最低価格を税込みで1皿110円から115円に引き上げるなど、商品ごとにきめ細かく価格を設定したことが功を奏したとされるのにくわえ、アメリカや台湾といった海外事業が好調だったことが大きかったよう。
昨今の外食産業は、客単価の上昇がほとんど見込めない貧しい日本市場よりも、海外市場に活路を見出すといったところが増えている状況だが、くら寿司も多分に漏れず海外への進出に力を入れているところ。
現に昨年のくら寿司の店舗数推移を見てみると、日本国内が535→544だったのに対し、米国・台湾・中国大陸を合わせた数は92→114と、現状海外店舗のほうが出店ペースが上がっているようなのだ。
そんなくら寿司による海外進出の一環として、近年日本国内で増えているのが、今回のようなインバウンド向けのグローバル旗艦店。
回転寿司の文化を海外にも広める“ジャパンカルチャー発信型店舗”として、2020年に第1号店を浅草にオープンさせたのを皮切りに、東京都内では原宿・押上(スカイツリー前)駅前に、また関西万博の開催を見越してか、大阪にも道頓堀・なんばパークスサウスに、さらには台湾の高雄にも、このようなグローバル旗艦店を展開しているくら寿司。
今回オープンした銀座店でも、寿司・天ぷら・団子をつくるパフォーマンスを楽しめる屋台を設けたりと、観光要素を加えた食体験を提供するのが特徴的なこれらの店舗だが、ここでの楽しい体験を胸に刻んでもらい、自国に戻った後も現地に存在する回転すし店、ひいてはくら寿司に慣れ親しんで欲しいといった思惑があるようなのだ。
「オーケー」出店で話題になったビルにオープン
いっぽうで、今回くら寿司が銀座店をオープンさせた「マロニエゲート銀座2」といえば、もともとOLファッションの聖地と呼ばれた「プランタン銀座」が存在。最近では、ディスカウントスーパーの「オーケー」がオープンし、大きな話題となった場所だ。
これにより、マロニエゲート銀座2にはくら寿司・オーケーにくわえ、ユニクロ・ジーユー・ダイソーなどが入居することとなり、その店舗ラインナップだけをみると、どこの地方にでもあるような巨大ショッピングモールと、そう変わらないといった印象も。
ただ、このマロニエゲート銀座2に出店しているユニクロ、さらにダイソーに関しては、いずれも各社のグローバル旗艦店と位置づけられた店舗になっているということで、いうなれば同ビルは“グローバル旗艦店密集地”の様相を呈しているというのだ。
ユニクロはともかくとして、ダイソーもアジア、北米、中東など25の国や地域に現在約1,000店舗を展開中と、海外進出には意欲的な企業ということで、銀座店ではダイソーだけでなく、300円ショップブランドの「Standard Products」「THREEPPY」も同時展開。インバウンド向けに、日本のワンプライスショップの魅力を大いに披露する場となっているとのこと。
今回のくら寿司の件もしかりだが、こういった庶民派チェーンが銀座に出店する度に、SNS上などでは「かつての憧れの街が…」「銀座も落ちぶれた」などといった声があがるものだが、どちらかというと落ちぶれたのは日本人の購買力のほうで、出店する側も最早日本人客をほとんど相手にしていないというのが実際のところのようだ。
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