はなまるうどん「かけ小」は10年で約3倍の価格に。再び値上げ相次ぐ外食チェーン、実質賃金が下がり続ける日本を“見切る”動きも顕著に

「はなまるうどん」が今月8日から、全店舗でうどんや天ぷらなど30品目を10円から80円値上げすると発表。外食チェーンの値上げラッシュが、ここに来て再加速している状況だ。

はなまるうどんでは、270円だった「かけ（小）」が290円に。さらに「温玉ぶっかけ（小）」は340円が390円に、「きつね（小）」は390円が450円に、「ちくわ磯辺揚げ」は110円が120円に、それぞれ値上げするという。

直近では、2022年10月1日にも価格を改定していたはなまるうどんだが、「10月の値上げを上回るほど原材料やエネルギー価格、物流費、人件費等が高騰している」ということで、今回の再びの値上げとなったようだ。

マクドナルドもすっかり“高級品”との声も

今年2月頃から相次いで聞こえるようになった、外食チェーン各社による値上げ発表。

はなまるうどんと同じくうどんチェーンでは、「丸亀製麺」も今月7日からうどんを使った主な商品を30円から60円、天ぷらの一部を10円値上げするとしており、なかでも創業以来、価格を据え置いてきた「釜揚げうどん（並）」も290円から340円に引き上げられることに。

また「デニーズ」「ロイヤルホスト」といったファミレスにくわえ、「日高屋」や「かつや」なども、この2月～3月のタイミングで揃って値上げとなったわけだが、これらのチェーンはいずれも2022年にも値上げを行っており、原材料費などの高騰が各社の想定以上の厳しさであることを物語っているともいえそうだ。

いっぽうで今回取沙汰されているはなまるうどんといえば、2001年の創業時から10年以上の長きに渡って「かけ（小）」を100円という破格値で提供していたことでも、広く知られた存在。

これまでの価格の推移をみてみると、2010年代までは100円台を維持していた「かけ（小）」だったが、2020年5月には70円もの大幅値上げが実施されるなど、この頃からは毎年のように価格改定が行われることに。気が付けば今月8日以降は290円と、ここ約10年で実に3倍ほどに高騰したという格好だ。

このはなまるうどんの「かけ（小）」に限らず、過去のいわゆるデフレ真っただ中の時期と比べ、価格が大幅に高騰したという飲食メニューは数々挙がるところ。例えば牛丼などは、以前は「牛丼戦争」と呼ばれた値下げ合戦を各社が繰り広げ、並盛を250円で提供するチェーンもあったのだが、今ではすき家・吉野家だと400円を超える価格となっている。

またマクドナルドのハンバーガーも、ここ20年の間では60円台で販売されていた時期もあったものの、昨年春以降からの3度に渡る値上げを経て、今では170円～という価格設定に。つい最近も「4人分頼んだら7000円だった」というツイートが、SNS上で大いに取沙汰されるなど、一部では“すっかり高級品”といったイメージも付きつつあるようだ。

簡単にマクドナルドでお昼終わらせようと思って4人分頼んだら7000円近くかかってマクドナルドは高級品だなって実感いたしました。

— 冴島ｵﾝﾃｨｰﾇ依子 (@ontine9neo) March 4, 2023

物価上昇とともに所得も伸びる海外に活路を求める動きも

このように、外食チェーンの値上がりが相次いでいるといった話のいっぽうでは、今年1月の実質賃金が、前年同月比で4.1％減と実に8年8か月ぶりの下げ幅となったというニュースも。

報道によれば、実質賃金がマイナスとなるのは10か月連続ということで、今年1月は1人当たりの現金給与総額こそ、去年1月に比べて0.8％増加したものの、物価の上昇率がこれを大きく上回ったがために、大幅な下げ幅となったという。

このように昨今の物価上昇に、賃上げがまったく追いついていないというのが日本国内の現況なのだが、そういった状態があまりにも長引くようだと、これまでは原材料などの高騰にくわえ“デフレ脱却”といった意味合いからも、「致し方無し」と許容する声も少なくなかった外食チェーンの値上がりに対しても、受け入れがたいといった反応が増えてくることも考えられるところ。

そういった空気も察してか、最近ではコロナ禍も落ち着いたということで、外食大手チェーンの間で海外進出の動きが再び加速しているといった話も出て来ているようだ。

インフレに苦しむのは日本に限らず世界各国も同じなわけだが、とりわけアジア圏は所得水準の向上や人口増などの好材料が多く、またアメリカは物価の上昇こそ著しいものの、所得もそれとともに伸びていることから、日本より客単価も高く設定できるのだという。

こうした動きをみても、物価は上がれど賃金は上がらずという日本の特殊かつ悲惨な状況が浮き彫りになっているといったところで、外食各社がそれに見切りを付けて海外に活路を見出そうとするのも、当然の流れだと言えそうである。

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