円安が止まりません!対ドルでは約38年ぶり、対ユーロでは導入以後で最安値の水準となっています。そんな中で大注目の米6月雇用統計が発表されます。円安の背景から、今後の展望、具体的なトレード戦略について解説していきますので、よろしくお願いします。(ゆきママ)
しつこい円安継続で催促相場に移行
以前は金利差が円安要因とされていました。確かに、銀行にお金を預けていても日本では利息(金利)はほとんどつきませんが、米国などでは年5%を超えますからね。円を売って米ドルを買って保有しておくだけでお金が増えるわけですから、これは強烈な円安要因です。
しかし、ここ最近は米国の景気悪化やインフレ低下を示唆する経済指標が相次いでおり、日米金利差は縮小し続けています。が、それでも円安は止まらないどころか、直近は一段と加速しています。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)
この円安継続の背景として、財務官経験者、日銀OBなどからは円の価値の引き直しが始まったのでは、という声が相次いでいます。
つまり、本来であれば金利を引き上げるといった金融引き締めで円安に対抗すべきですが、日本にその体力が残されていないという指摘です。
理由としては、日銀が金利を1%引き上げると、国債の利払い費(利子の返済のために充てる費用)は9兆円上がると試算されています。消費税1%で約2兆円の税収ですから、1%の金利上昇で消費税4.5%分の税収が新たに必要になるということです。
したがって、日本は金融緩和を継続するしかなく、利上げといった円安への根本的な対抗策がないといった見方が強まっており、円が売られやすくなっているとのこと。
似たような指摘は海外からもあり、催促相場に陥っているとの声もあります。この円安進行に対し、日本政府・日銀に対し、何らかの対策、答えを求めているということですね。
7月30日・31日の日程で日銀金融政策決定会合がありますが、すでに発表されている国債の減額規模が小さかったり、一部で噂されている利上げがない場合には、さらに円安が加速させるという意思表示に近いため、このしつこい円売りが終わるのは、かなりの材料、何らかの決定打が必要でしょう。
雇用市場は減速傾向だが雇用数そのものは依然堅調か
ドル円・クロス円の上昇トレンド、円売りが終わるか否かは政府・日銀の対応スタンスがかなりのウェイトを占めることになりそうです。
一方で、今夜の米雇用統計で雇用の減速、景気悪化が決定的となれば、いよいよ米国、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げが本格化ということで、ドルの先安感が強まって円高となり、一旦調整下落となる可能性はあるでしょう。
特にここ最近は、ユーロ円やポンド円などのクロス円を中心に急ピッチで円安が進んできたこともあり、反動はそれなりに期待できそうです。
そこで、今回の雇用統計に向け、先行して発表された雇用指標を見ると、全体的に弱い数字が並んでおり、ある程度の減速は期待できそうです。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
ISM(全米供給管理協会)を見ると、米国企業は景気の先行き、雇用に対して一定レベルの懸念を持っていることが分かりますし、実際に失業保険を申請する人も増加傾向にあるということで、徐々に雇用環境が悪化していることが伺えます。
ただし、先月も雇用市場が悪化傾向にあったものの、インフレに伴いダブルワーク、トリプルワークする人口は増え、パートタイムで働く労働者が多くカウントされたことで、5月の非農業部門雇用者数は+27.2万人とかなり強い数字となっています。
求人件数が伸びていることを踏まえると、先月と同様に正社員は減少してもパートタイマー労働者の伸びは止まらず、堅調な雇用者数が出るというパターンも想定され、今回は読みが難しいイベントとなっています。
基本的に押し目狙い!今夜の想定レートは159.60〜162.50円
ドル高というより円安で、よほどのドル安でないと今のトレンドが変わる可能性は低そうですから、今夜のトレード戦略は基本的に押し目買いということにはなるでしょう。
パウエルFRB議長は雇用が予想よりも下振れれば利下げ開始としていますから、予想を大きく下回ることがあればドル安加速で円高の目もあります。もっとも、そのハードルは高く、非農業部門雇用者数が+5万人を下回るようなサプライズが必要でしょう。
逆に予想をやや下回る程度、+15.0万人前後となるのであれば、ここ2ヶ月でならすと平均で+20万人を超えるわけですから、まだまだ強いという評価になりそうで、初動こそ下値を試してもジリジリと反発する可能性が高そうです。

ドル円・日足チャート
雇用統計を前にすでにやや調整模様が強まっており、高値から1円幅の下落となっています。このレベルなら、雇用統計発表前に軽く買いつつ、結果を待つ戦略で良さそうです。
レート的には、160.00〜160.20円で押し目買いしつつ、大きな陽線を描いた6月26日の安値159.60円割れで一旦撤退でしょうか。
158-159円台で下値固めが進むのであれば、再度ロングで入って良いですが、ここをズルズル割り込むのであれば短期的なトレンド転換の可能性も高まったとみて慎重に様子を見たいところ。
雇用統計の数字としては、平均時給や失業率の数字もポイントにはなりますが、平均時給が前月と比べて伸びなしの0.0%以下の数字が出ない限りは、非農業部門雇用者数が重要でしょう。これが+10万人以上の数字が出ていれば、引き続き押し目買いを狙っていくイメージです。
いずれにせよ、事前予想の数字からよほど乖離がないと決定打にはなりませんから、まずは円安トレンドは継続と見て押し目を狙っていくのが良いでしょう。ドル安になっても、クロス円主導の円売りがドル円を支えますから、下値は限定的と考えています。
もっとも、160.00円の大台レベルを大きく割り込んでくると、急ピッチで円売りが進んできた分の調整は大きくなりそうですから、その点には警戒して損切りも入れておきましょう。
また、予想並みかそれ以上の数字が出れば一段高で、上値に関しては162.00円のレジスタンス(上値抵抗)を超えると、いよいよ163-165円レベルの水準が見えてくることになります。
ただし、為替介入の基準となっている4%ルール(2週間で4%以上の変動があった場合は為替介入が実施されやすい)の水準が1ドル=163円となっており、163円に近づくと実施される可能性が高まりますので、162円半ばではいったん利食いして、その後の値動きを慎重に確認したいところでしょう。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2024年7月5日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による