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もうECは死んだ。中国で大流行の「新小売」に日本も乗り遅れるな=牧野武文

アリババ創業者のジャック・マーは「ECの時代は終わり、新小売の時代になる」と予言。そしてその通りになっています。中国のコンビニ・スーパー・百貨店が急いで導入を進めた「新小売」とは何か。それを理解すれば、日本の小売業の勝ち組も見えてきます。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2020年9月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

「ECの時代は終わり、新小売の時代になる」

今回は、百貨店、スーパー、コンビニといった既存小売業が、どこまで新小売に対応をしているかをご紹介します。

新小売というのは、2016年にアリババの創業者ジャック・マーが提唱した概念で、簡単に言えば、オンライン購入体験とオフライン購入体験を融合させるというものです。その代表例がアリババの新小売スーパー『フーマフレッシュ』で、「来店/スマホ注文」「持ち帰り/30分配達」を自由に組み合わせて、生鮮食料品を購入することができます。

ジャック・マーは新小売の概念を提唱した時に、「ECの時代は終わり、新小売の時代になる」「すべての小売業は新小売になる」という予言もしました。

実際、既存の百貨店・スーパー・コンビニは、ECや新小売に押されて経営が苦しくなっています。活路はひとつしかありません。既存小売も新小売に対応していくことです。それにより、百貨店、スーパー、コンビニの中からも、新小売に対応をして、業績を伸ばすところが現れ始めています。

今回は、百貨店、スーパー、コンビニがどのように新小売に対応をしているか。実例を交えながらご紹介します。

来店かスマホ注文か、持ち帰りか配達か。選べる4つの購入方法

アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)はさまざまな予言をすることでも知られています。しかも、その予言が数年後にずばりと的中するので、世間が驚くのです。しかし、ジャック・マーのそれは、予言ではなく、ロジックに基づいた予見なのです。ただ、その内容があまりにも大胆であり、短い期間に実現することから、みな驚いてしまうのです。

そのジャック・マーの予言の中でも、2016年に杭州市の雲栖で開催したコンベンションでの発言が注目され続けてきました。

「インターネット時代になり、伝統的な小売業はECに圧迫されています。未来では、オフライン小売とオンライン小売は深く結合し、さらに物流、マーケティングもビッグデータ、クラウドなどの新しいテクノロジーを利用するようになり、新しい『新小売』という概念を構築していくことになります。ECの時代は終わり、伝統的な小売は改革され、すべての小売業は新小売にアップグレードされることになるでしょう」。

この言葉は要約されて「ECは死に、新小売が始まる」「すべての小売業は新小売になる」という言葉になって広がっています。淘宝網(タオバオ)の成功で急成長をしたアリババの創業者が「ECの時代は終わる」と言ったのですから、世間が注目をするのも無理もありません。

しかし、では、ジャック・マーの言う「新小売」とはなんなのか、この時は誰も理解できていませんでした。

2017年7月に、アリババが上海市金橋に新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)を開店した時ですら、多くの人は新小売の意味が理解できていませんでした。

新小売とは、オンライン購入体験とオフライン購入体験を融合して、消費者が都合に合わせて消費スタイルを選択できるようにする仕組みです。フーマフレッシュでは、通常の店舗スーパー以外に、スマホからの注文を受け、半径3km以内に30分で配達するというものでした。

これは店舗と配達の2本立てではありません。「来店/スマホ注文」「持ち帰り/配達」を自由に組み合わせることができます。

1)来店をして、商品を自分の目で選んで、持って帰る。従来のスタイルです。
2)来店をして買った商品を配達してもらう。重たい水や油を買った時に利用します。
3)スマホで注文して、配達。店舗ECのスタイルです。
4)スマホで注文して、店舗受け取り。レジャーに出かける時など、時間の節約になります。

このフーマフレッシュは、アリババのライバルである京東にいた侯毅(ホウ・イ)が考案したものです。生鮮ECで用いられている「前置倉」の考え方では、消費者は自分の目で生鮮食料品の品質を確かめることができません。これでは、若い単身者は使うかもしれませんが、スーパーにとって最大の顧客であるファミリー層や中高年はなかなか利用しないだろうと考えました。

そこで、倉庫ではなく、店舗にして、店舗と倉庫の機能を兼ね備えた「店倉合一」という新しいスタイルを考案します。

その企画を京東の上層部に提案をしますが、EC企業である京東は、店舗経営をするということに難色を示し、却下されてしまいました。そこで、侯毅は京東を出て、独立をすることを考えます。その中で、アリババの張勇(ジャン・ヨン、ダニエル・チャン)と知り合い、これこそまさにジャック・マーの予言した新小売の典型例ではないかという話になりました。そこで、侯毅は京東からアリババに移籍をして、フーマフレッシュを始めることになったのです。

Next: 同規模スーパーの4倍の売上!フーマフレッシュが今後のスタンダードに

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