ブランド統一と店舗活用が成功のカギ
百貨店の対応を見ていると、伝統のある小売業であるために、対応が遅いところもあり、一方で積極的に新小売化を進めて結果を出しているところもあります。このような事例から、2つの法則を導き出せるのではないでしょうか。
ひとつはブランドの統一です。百貨店グループは、百貨店、モール、スーパーなどの集合体で、同じグループの中にさまざまなブランドが存在しています。しかし、消費者は普段、Aという百貨店とBというスーパーが同じグループであることを意識しません。それなのに、親会社のCという名前でECや新小売プラットフォームを開設しても、ピンとこないのです。それぞれのブランドは、その地域の歴史があり、ブランド力があるのに、ECでそれをうまく活かせていないのです。
一方で、サブブランドがあまりない中堅グループである王府井百貨や銀泰百貨が、新小売化により、業績を伸ばしています。コンパクトで、消費者からブランド価値がわかりやすい百貨店グループが成功をしているというのは興味深い現象です。
もうひとつは、店舗+新小売ではなく、店舗×新小売という相乗効果を狙ったところが成功していることです。百貨店にとって店舗は貴重な財産です。その地域の一等地にあり、その地域の購買力が高い消費者が集まってくる場所にあります。その資産を過大評価するあまり、ECや新小売への対応が遅れたり、投資を絞っていつまでも実証実験のような規模にとどめているところは、経営が厳しくなってきています。
その中で、店舗の機能をより強くするために、ライブコマースを活用している銀泰百貨の事例が注目されます。ライブコマースにより、スタッフと消費者のバインドを強化することに使えば、売り場スタッフはコンシェルジュなど質の高い接客ができるようになり、それが売上増に結びつくということを、最初から戦略的に考え、実行してきたことが成功に結びついています。つまり、新小売で新たな売上を加算するのではなく、新小売で店舗の価値を高め、店舗売上を増加させることを狙いました。店舗の価値が他の業種よりも高い、百貨店ならではの発想です。
百貨店として、何が核になっているのか、それをより強めるにはどのように新小売テクノロジーを活用すればいいのか。それをしっかりと考えたのでしょう。流行っているようなので、お試しで対応してみる、ライバルが導入しているからうちもという戦略なき新小売対応は結局投資の無駄使いになっているようです。
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『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』(2020年9月28日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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