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もうECは死んだ。中国で大流行の「新小売」に日本も乗り遅れるな=牧野武文

<大商のケース>

大商は、大連を拠点とする高級百貨店グループです。マイカルなどの百貨店、新瑪特などの大型スーパーを中心に、160店舗を展開しています。

ECへの対応は2014年と早く、大商天狗網を開設しています。全体の売上は3280億元ですが、そのうちの300億元がECでの売上になっています。

現在は、コロナ禍を機に、ライブコマースに力を入れています。各売り場スタッフの判断でライブコマースを配信できるようにし、1人のスタッフが週に3回から5回のライブコマースを配信しています。

<重慶商社のケース>

重慶商社は、中国西部の最大の小売グループです。重慶百貨を中心に百貨店、スーパー、電気店などを展開しています。2014年にECサイト「世紀購」を始めています。面白いのは、物流に強みがあることを活かし、当初から輸入化粧品と輸入ベビー用品に力を入れていたことでした。スタート時には、商品の60%が輸入品で、「重慶の輸入品の窓口」とも呼ばれました。現在でも、女性ファンの多いECサイトになっています。

新小売化については、2019年に多点(ドゥオディエン、Dmall)を全面導入しました。多点は、新小売化に必要な基幹システムからアプリ、ミニプログラムまでを提供する企業で、顧客管理、商品管理なども一体化できるシステムです。この多点を導入することにより、到家サービスにも対応しました。

現在、スーパーを中心に173店舗で多点を導入し、113店舗で到家サービスに対応しています。また、54店舗でスタッフによるライブコマースを始めています。

<王府井百貨のケース>

王府井百貨は、北京市を中心に47店舗を展開する百貨店グループです。新小売への対応は早く、まだ新小売という言葉も広まっていない2016年にすでにマルチチャンネル化に着手をしています。WeChat、ミニプログラムなどを使って、消費者の問合せや購入相談に応えるサービスを始めています。事前に商品を購入し、決済まで済ませて店舗に取りにいく「取置きサービス」も始めています。

さらに、自社のECサイトだけでなく、アリババのTmallに旗艦店を出店するなど、積極的にオンライン化を進めてきました。

また、コロナ禍を機にライブコマースを積極的に行い、半年で1200回のライブコマースを行い、累計視聴者数は1000万人を超え、売上も2億元を突破しました。成都店では独自にTik Tokによるライブコマースを行い、これが好評だったため、王府井百貨全体としてTik Tokの運営元であるバイトダンスと提携し、ライブコマーススタジオを設立しています。今後は、Tik Tokによるライブコマースに軸足を置いていくことになります。

<銀泰百貨>

銀泰百貨は、杭州市を拠点に30店舗を展開する百貨店グループです。銀泰百貨は新小売化に成功をした百貨店としても有名になりました。その鍵になったのは、店舗とオンラインの相乗効果を狙ったことです。

多くの百貨店が、コロナ禍による休業を補うためにライブコマースに注目をしたのに対し、銀泰百貨は2019年からライブコマースを始めていました。100人の販売スタッフを選抜し、ライブコマースチームを結成。自分が担当する商品をライブコマースで紹介し、販売をしました。その狙いは、ライブコマースによる売上増ではなく、店舗売上の増加でした。ライブコマースを見た消費者が店舗に行くと、出演していたスタッフがカウンターの中にいます。多くの消費者が親しみを感じて、商品相談などをするようになりました。販売スタッフは売り子ではなく、コンシェルジュとして機能するようになり、店舗での客数は変わらなくても、客単価が上昇をしたのです。また、化粧品などを中心に到家サービスにも対応しましたが、これも売上が狙いではなく、顧客サービスの一環という考え方でした。深夜や急な出張、デートの前に、化粧品が切れていたという時に使われているとよく言われます。

このような店舗とオンラインの相乗効果を狙う施策により、2019年には全体で24.2%も売上を伸ばすことに成功しました。

コロナ禍では、ライブコマースチームを一気に5,000名に拡大し、店舗は休業しても、ネットで開店しているクラウド百貨店としても有名になりました。

Next: 中国百貨店の奮闘から学べる「2つの成功法則」とは

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