米国と中国の家計消費は前年水準を回復した一方、日本は前年比−7.6%とダメージを受けたままです。いったいその原因は何なのか?ニュー・ノーマル(新常態)における日本の消費者動向について、総務省のデータから紐解きます。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)
※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2020年9月16日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
家計消費、米中は前年水準を回復
<中国は前年比プラスに回復>
コロナの発祥国である中国では、2020年8月の消費が前年比でプラスに転じています。8月末の、経済データが出るのが早すぎる感じがしますが、ある程度は信頼できるでしょう。
小売売上でもっとも大きな自動車が前年比11.8%増、衣料は4.2%、家電は4.3%プラスだったという。化粧品も19%増加です。飲食店は、前年比7%減だったという。
小売売上の全体では0.5%プラスです。中国の小売売上は、コロナ前は8%の増加傾向(2019年:41兆元:600兆円)でしたから、その水準からはマイナス7.5ポイントでしょう。
<米国の小売売上、7月は前月比+1.2% 前年同月比+2.7%>
コロナの累積感染が600万人を超えて世界一の米国でも、小売売上7月が、前月比+1.2%でした。前年同月比では+2.7%ですから、2019年の水準を回復しています。
2020年の小売売上の前月比では、1月が+1.3%、2月-0.5%、3月-8.7%、4月が底で-16.4%、5月が4月のマイナスを回復した+17.7%、7月が+1.2%です。米国では小売売上は、コロナ前に回復したとみていい。(注)国土が日本の23倍広く、四季の変化が州で様々なので、前月比で示すことが多い。
※参考:【米国】小売売上高 – 経済指標 – Yahoo!ファイナンス
小売売上を含む個人消費が、GDP(22兆ドル)の70%を占めています。米国は、個人消費で世界1の大国です。個人消費が増えないかぎり、米国GDPが増えることはない。
日本では、政府財政と輸出が大きく、個人消費はGDPの60%になっています。
日本の消費は「消費税10%」で冷え込んだ
日本では、店舗売上の全体統計は、4年に1度の商業統計しかありません。小売の月次データは、百貨店協会、チェーストア協会、コンビニ協会、ドラッグストア協会などの各業界団体が出しています。全体の小売データは、家計消費からがたどるのが早いのです。最新のものは、20年7分です。
総務省は9月、ほぼ45日遅れで、家計消費のデータをアンケート集計して出しています。対象は家族2人以上の世帯です。
・勤労者世帯:54%(民間サラリーマンや官僚)
・個人事業世帯:12%(農林漁業、医師、弁護士、会計士等)
・無職世帯:34%(65歳以上の年金世帯が多い)
2人以上の世帯の、世帯主の世代では、60歳未満が48%、60歳以上が52%と、すでに60歳以上が半分を超えています。
※参考:家計調査報告(2020年7月分) – 総務省
そして、2019年7月からの家計消費は以下となっています(前年同月比)。
<2019年の家計消費(平均世帯人数は2.7人)>
7月: 99.3%
8月:101.6%
9月:106.3%
10月:95.8%(消費税10%にアップ)
11月:98.5%
12月:97.3%
<消費税2%のマイナス効果>
20年10月に、前年比95.8%(マイナス4.2%)になったのは、10月に消費税が2%上がり、除外された食品・医療以外の物価が2%上がったからです。2%上がった物価で、家計消費額は、マイナス4.2%でしたから、商品数量では約6%減ったことになります。20年11月、12月も家計消費はマイナスでした。コロナ以前から、日本の家計消費は減っていたのです。
世帯の所得が伸びていないときに、税を上げると、消費額が減るのは当然でしょう。これは、2014年4月から消費税を3%上げたときも、同じだったのです。
政府は、消費税増税後の消費額の減少を、商品価格上昇前の駆け込み需要(+6.3%)があったためとしていますが、そうではないでしょう。本質部分では、消費税2%分(税収で1%当たり年間2.7兆円:10%で27兆円)の、世帯の平等な貧困化があったのです。
10%では27兆円になる消費税は、過去にはなかった世帯からの納税です。1,000円の商品が1,100円になると、さすがに、100円高くなったという感覚になります。消費税の税収は、国の税収の33%を占めるまで大きくなりました。