コロナ感染拡大に対する政府の無策によって日本は多くを失いました。政治家は夏休みをとって次の選挙に備える前に、国民に対してやることがあるはずです。夏休み需要の喪失は甚大で、V字回復どころか、企業倒産の増加が懸念されます。結局は、国民の不安を解消して経済活動を再開できる形にするしかありません。そして、その手がないわけではありません。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2020年7月30日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
政府対応に運命を左右される
19世紀のスコットランドの作家、サミュエル・スマイルは次のように述べました。「失った富は勤勉によって、失った知識は勉学によって、失った健康は節制や医薬によって取り戻せるかもしれない。しかし、失った時間は永久に取り戻せない」。
新型コロナウイルスの感染拡大に対する政府の無策によって、日本も多くを失いました。
中でも、政府の無策によってコロナ禍が長期化し、甲子園での高校野球大会の場を奪われた高校球児、オリンピックの延期、場合によって中止となれば、メダルを期待された選手ばかりか、五輪を最後の花道としようとしていた選手の人生から大きな夢を奪います。
その責任は重大です。人類の危機ともいうべき重大な時期に、日本政府の姿がまったく見えません。
米国では1兆ドル規模の追加経済対策案
さすがに11月の大統領選挙を前に、トランプ政権は動きました。3月以降に打ち出した大規模なコロナ支援策も、多くが7月末で終了し、その反落の影響が懸念されていました。その危機感から、共和党は追加策として1兆ドル規模の追加財政支援策を提案しました。この中には、改めて1人最大1,200ドルの給付金提供や、失業保険上乗せが切れるのを見て、規模を縮小して延長することも含みます。
しかし、一方でコロナの感染拡大が止まらず、州によっては再び経済の規制が検討される中では、こうした追加支援策も「息継ぎ」効果しかありません。失業者支援として打ち出した週当たり600ドルの上乗せは7月31日で終了するので、今後は週当たり200ドルの上乗せとして継続したいとしていますが、受給者にとっては大幅な所得の減少となります。
米国ではかつて自動車の販売促進のために「キャッシュバック」を打ち出しましたが、これをやめると需要が落ち込むため、結果的にもう何十年もこれを続ける羽目になり、「麻薬」のように、止めるにやめられなくなりました。
同様に感染が収まらないと、政府は果てしなく経済支援を求められます。何もしないで経済が大きく反落する事態は回避できたとしても、経済を底上げする力はありません。
それでも米国はこうした財政の追加策が打ち出そうとしているだけ救いがありますが、日本では感染がまた全国的に拡大する状況を放置したまま、「Go To トラベル」や今後は「Go To イーツ」キャンペーンの誘い水で、人々を動かそうとしています。