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株価下落「伊藤忠商事」今が買い?長期投資家が注視すべき非資源利益85%の強みとリスク=栫井駿介

株式市場において、伊藤忠商事は常に注目の的ですが、足元の株価はやや軟調な推移を見せています。多くの投資家が「なぜこれほど実力のある企業が下がっているのか」と疑問を抱いていますが、その背景には同社特有の事業構造が深く関わっています。

伊藤忠商事は、三菱商事や三井物産といった他の総合商社とは一線を画す「いい味」を持った企業です。非資源分野に強みを持ち、就職人気ランキングでも常に上位に君臨するこの企業が、今なぜ買い時と言えるのか、その理由を深く掘り下げていきましょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

資源価格高騰の裏で明暗が分かれた「非資源勝者」の宿命

過去1年のチャートを振り返ると、三菱商事や三井物産が大きく上昇しているのに対し、伊藤忠商事の上がり幅は小さく、直近ではアメリカのイラン攻撃以降、株価が下落する場面もありました。

伊藤忠商事<8001> 日足(SBI証券提供)

伊藤忠商事<8001> 日足(SBI証券提供)

この差が生まれる最大の要因は、原油をはじめとする資源価格の動向です。

原油や石炭、銅といった資源価格が上昇する局面では、資源権益を多く持つ三菱や三井が優先的に買われ、恩恵を享受します。
それに対し、資源への依存度が相対的に低い伊藤忠は、どうしても後回しにされてしまう傾向があるのです。

しかし、注目すべきはバリュエーションです。
他社がPER20倍を超える水準まで買われている中で、伊藤忠はPER15倍程度に留まっており、ここに相対的な割安感が生じています。

トレーディングから事業投資へ

伊藤忠商事は1858年の創業以来、海外の商品を日本に売る「トレーディング」で成長してきましたが、近年はそのビジネスモデルを大きく変貌させています。
現在では、培った世界各地とのネットワークを活かし、企業に投資をしてその成長から収益を得る「投資会社」としての性格を強めています。

単にお金を出すだけでなく、人を送り込み、自社のネットワークを繋ぎ合わせて投資先の事業をより進化させる「ハンズオン投資」が彼らの真骨頂です。
食品のDole、小売のファミリーマート、自動車のヤナセ、金融の保険の窓口など、多岐にわたる分野に投資する姿は、まさにウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイに似た「投資コングロマリット」と言えます。
バフェットが日本の商社に注目したのも、この事業投資会社としての側面に納得したからに他なりません。

非資源利益85%がもたらす「ブレない収益力」

伊藤忠の最大の強みは、資源価格に依存しない利益構造です。

同社の利益構成比を見ると、資源由来の利益は全体の15%に過ぎず、残りの85%を非資源分野で稼ぎ出しています。

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出典:伊藤忠商事 統合レポート

これに対し、三菱商事は45%、三井物産にいたっては56%が資源利益となっており、その差は歴然としています。

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資源ビジネスは価格が高い時は大きな利益を生みますが、下がった時のダメージも甚大です。
実際に2016年頃、三菱や三井はチリの銅山投資などで巨額の損失を出し、赤字に転落した歴史があります。

一方、私たちの日常に密接に関わる分野で着実に利益を積み上げる伊藤忠は、利益のブレが小さく、見事な右肩上がりの成長曲線を維持しています。

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出典:マネックス証券

利益ナンバーワンへの返り咲きと「パックマンM&A」戦略

2022年や2023年は資源価格の高騰により三菱や三井に利益で水をあけられていた伊藤忠ですが、2026年3月期の決算予想では、再び商社ナンバーワンの利益を稼ぎ出す見込みとなっています。

この成長を支えているのが、次々と企業を飲み込み、自社の利益に取り込んでいく「パックマンM&A」とも呼べる戦略です。

最近では、すでに子会社であったIT大手の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を完全子会社化し、上場を廃止して自社に取り込みました。
これまで20%しか取り込めていなかった利益を100%取り込むことで、連結純利益を強制的に押し上げる手法を徹底しています。
もちろん、これは単なる会計上の操作ではなく、人材の優秀さを活かして投資先のビジネスを改善し、シナジーを生み出す自信があるからこそなせる技です。

Next: 伊藤忠商事は買いか?長期投資家が注視すべきこと

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