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株価下落「伊藤忠商事」今が買い?長期投資家が注視すべき非資源利益85%の強みとリスク=栫井駿介

「下流」を制する者が商売を制する

伊藤忠の経営哲学の一つに「利は川下にあり」という言葉があります。
これは、原料の採掘(川上)よりも、消費者に近い現場(川下)を抑えることで、トレンドを捉え、ビジネス全体の流れをコントロールしようとする考え方です。

その代表例がファミリーマートの完全子会社化です。
ファミリーマートを持つことで、店頭のコーヒーマシンに入れる豆を自社のルートで供給したり、ATMを活用した金融ビジネスを展開したりと、商売の幅を劇的に広げることができます。
また、スポーツブランドのデサントに対しても、敵対的TOBを仕掛けてまで傘下に収め、事業の活性化を図ってきました。
バナナのDoleなども含め、消費者が毎日接する商品を抑えることで、不況にも強い安定した収益基盤を構築しています。

財閥系への強烈な対抗心が生んだ「野性的」な企業文化

伊藤忠の強さを語る上で欠かせないのが、三井・三菱という財閥系企業に対する強烈なライバル心です。
かつて「1流半」の商社として扱われてきた歴史があるため、現在の岡藤会長をはじめとする経営層は、財閥系に対する並々ならぬ対抗心を持って経営に当たっています。

この対抗心が、朝型の勤務スタイル導入による効率化や、既存の枠にとらわれない画期的な施策を次々と生み出す原動力となっています。
就職活動においても、かつては財閥系の下に見られていたのが、今や学生からの人気で三菱商事と肩を並べるツートップの座を確立しました。
この「鍛え上げられた野性的な人材」の層の厚さが、伊藤忠の成長を支える見えない資産となっています。

経営哲学「稼ぐ・削る・防ぐ」と過去の失敗の教訓

伊藤忠の経営を支えるスローガンが「稼ぐ、削る、防ぐ」の3ワードです。

特に「防ぐ」という言葉には、過去の苦い教訓が刻まれています。
同社はかつて、中国の巨大企業CITIC(中国中信集団)に社運をかけた巨額投資を行いましたが、結果として3,000億円以上の損失を計上し、大失敗に終わった経験があります。

この失敗を二度と繰り返さないという強い決意が、現在の慎重な投資判断に繋がっています。
外部からは何でも買収する「パックマン」のように見えても、内部では極めて緻密で慎重な審査が行われているのが実態です。

この規律ある経営の結果として、伊藤忠はROE(自己資本利益率)を継続して15%前後の高い水準に保つ、極めて優秀な経営状況を維持しています。

リスク

もちろん、手放しで楽観視できないポイントもあります。

まず「非資源」を掲げつつも、金属カンパニーやエネルギー・化学品カンパニーを通じて、一定程度の資源ビジネスを行っているという点です。
そのため、資源価格が極端に下落する局面では、無視できないダメージを受ける可能性があります。

また、利益成長がM&Aに依存している点も課題です。
良い買収案件がなければ成長が鈍化する恐れがありますし、市場全体が好調な時期には買収価格も高騰するため、高値掴みのリスクがつきまといます。
M&Aの7割は失敗すると言われる厳しい世界において、今後も今の成功率を維持し続けられるかどうかが、同社の真の正念場となるでしょう。

まとめ

伊藤忠商事は、非資源分野に圧倒的な独自性を持ち、バリューチェーンの構築と緻密なM&Aに長けた素晴らしい企業です。
バフェットが注目したのも納得の、強固なビジネスモデルを有しています。

現在のPER15倍、利回り2%超という水準は、他社と比較して決して割高ではありません。
ROE15%という高い資本効率を考慮すれば、何らかの理由で株価が下がっている現状は、長期投資を検討している人にとって面白いタイミングと言えるかもしれません。

長期投資のコツは、素晴らしい企業を適切な価格で買い、素晴らしい企業である限り持ち続けることです。伊藤忠があなたにとって「素晴らしい企業」であり続けるか、ぜひその目で確かめ、投資の判断材料としてみてください。

YouTube動画でも詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。


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image by: beeboys / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2026年5月6日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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