今回は急な下方修正を発表したアステラス製薬<4503>を深掘りします。度重なる業績見通しの下方修正で、株価は1年で40%も下落。大手製薬メーカーのアステラス製薬で何が起きているのでしょうか?(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
アステラスの業績の変化
2024年4月12日、アステラス製薬は下方修正を発表しました。
その内容は、
「24年3月期第4四半期において、無形資産の減損損失として700億円の費用を計上する」
というものです。結果、営業利益が前年比90%減少。当初の予想からは、営業利益約95%下方修正という、まさしく絶望的な状況です。
出典:決算短信、ニュースリリースより作成
実は、今期の下方修正は、これで4度目。毎決算ごとに下方修正が発表され、多くの投資家が失望していると言えるでしょう。
出典:決算短信、ニュースリリースより作成
利益を見ると絶望してしまいますが、まずはアステラス製薬何が起こっているのか。現状を把握しましょう。
アステラス製薬は次なる収益源を探している最中
アステラス製薬の最大の課題は、
「主力の収益源が2027年に大幅に縮小する見込みであり、次なる収益源を確保すること」です。
2023年3月期の商品別売上比率を見ると「イクスタンジ」という薬が全体の約45%を占めています。
出典:統合報告書より作成
イクスタンジは、2012年に発売され、長らくアステラス製薬の最大の収益源となっています。この薬単体で、6,600億円もの売上を稼いでいます。
しかし2027年にイクスタンジの特許切れが控えており、この売上の45%相当が急減するリスクがあります。2027年以降はイクスタンジがジェネリック医薬品等に代替されると予想されることから、次なる収益源を作り出すことが急務なのです。
その次なる収益源として期待されているのが、更年期障害のための薬であるべオーザや、
出典:アステラス製薬ホームページ 個人投資家の皆様
老化に伴う視力低下や失明を引き起こす難病への医薬品のアイザーベイです。
出典:アステラス製薬ホームページ 個人投資家の皆様
これら次世代医薬品を成長させるために研究開発費などの資金を投入している状態です。
この現状を踏まえて、今回の下方修正の内容を見てみましょう。