日銀の「マイナス金利」施行以後、「金」の購入や「タンス預金」が増えるといった見方があり、「金庫」を手がける銘柄の思惑買いにつながっている。(『日刊株式投資情報新聞』)
材料株物色が活発で日経平均は340円安から持ち直す
株式市場概況(2016年3月8日)
日経平均の終値は1万6783円15銭(128円17銭安)、TOPIXは1347.72ポイント(14.18ポイント安)、出来高概算(東証1部)は25億4633万株。
8日後場の東京株式市場は、中国の2月の貿易収支が予想を上回ったとされて株価指数の先物が上昇に転じ、日経平均も11時過ぎの340円10銭安(1万6570円22銭)を下値に回復基調に転換。14時過ぎには1円53銭安(1万6909円79銭)まで回復した。ただ、引き続き米韓軍事演習に対する北朝鮮の反応などが不透明で、JPX日経400指数や東証マザーズ指数など、主な株価指数はすべて安い。
後場は不動産株が持ち直したほか、材料株物色が強まり、仮想通貨関連のマネーパートナーズグループ<8732>(東1)が中盤から尻上がりの上昇となってストップ高。サイオステクノロジー<3744>(東2)は金融機関向け収益管理システムで特許取得との発表が好感されて大引けにかけてストップ高。ドーン<2303>(JQS)は「ドローン」関連株人気が再燃して一段高。アドウェイズ<2489>(東マ)は昨日に続き「LINE」の上場期待の再燃に乗り大幅続伸。
東証1部の出来高概算は25億4633万株(前引けは12億6498万株)、売買代金は2兆5754億円(同1兆1897億円)。1部上場1943銘柄のうち、値上がり銘柄数は380(同119)銘柄、値下がり銘柄数は1470(同1766)銘柄。
また、東証33業種別指数は2業種が値上がり(前引けは全33業種が値下がり)し、不動産、繊維製品が高い。値下がり率の小さい業種は、不動産、繊維製品、卸売り、鉄鋼、小売り、食料品、鉱業、情報・通信、などとなった。
マイナス金利など受け「金庫株」の動意が活発
日本ISKは2月の終値から4割高
このところ「金庫」を手がける銘柄が活況高となり、製造販売の大手、日本アイ・エス・ケイ(日本ISK)<7986>(JQS・売買単位100株)は2月の終値から3月7日までで44%高となり、製造はしていないがくろがね工作所<7997>(東2)は同じく30%高となった。
日銀の「マイナス金利」施行以後、「金」の購入や「タンス預金」が増えるといった見方があり、思惑買いにつながっている。投機的な材料株ではあるが、日銀の次の金融政策決定会合は3月14~15日の予定。これに向けて再び投機色が強まると期待する向きもある。
日本ISKは耐火金庫の最大手で、昨年後半はマイナンバー制度にともない、企業向けの使用履歴付き大型金庫が話題になった。2月19日に発表した2015年12月期の連結決算は、金庫そのものは特段大きく寄与しなかったようだが、不動産賃貸物件の増加などにより予想を大きく上ぶれる着地となり、営業・純利益は前期比2倍になった。今期はこの反動減などから営業利益を0.7%減とするが、時価水準でのPERはまだ20倍前後。「マイナス金利」は追い風になる。
くろがね工作所にも注目集まる
この点、くろがね工作所<7997>については、金庫はよほどの特需がない限り連結業績への寄与は期待薄との見方が聞かれる。ただ、今11月期にかけての業績は拡大基調の見込みで、PERはやはり20倍前後。それほど割高感はないといえる。2015年3月末から4月末にかけて3倍高の急騰を演じたことがあり、値幅狙いの資金が注目しやすいとの見方はある。
両銘柄とも値動きが短期急騰型の印象があるため、上値メドなどは「相場は相場に聞け」のタイプになりそうだが、日銀の黒田総裁発言にはマイナス金利の幅拡大を辞さないニュアンスが込めた部分があったようだ。この意味で、急伸の谷間を仕込んでおきたいと注目する様子はある。
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