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原油高で追い風「資源株・商社株」は買いか?長期投資戦略と避けるべき銘柄も解説=栫井駿介

現在の株式市場は、原油価格の高騰という非常に厳しい環境下に置かれています。イランを巡る情勢は、解決の糸口がますます見えなくなっており、投資家はかつてない地政学的リスクに直面しています。このような環境では、原油高の恩恵を受ける企業がある一方で、大多数の企業にとってはコスト増に苦しむ厳しい局面となります。私たち株式投資家は、単に不安に陥るのではなく、この状況下でどのような戦略を立て、どの銘柄に注目すべきか、あるいは避けるべきかを冷静に判断しなければなりません。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

1970年代の石油危機は再来するのか

今、市場で最も恐れられているキーワードの一つが「スタグフレーション」です。
これは、景気が後退しているにもかかわらず物価が上昇し続けるという、最悪の経済状態を指します。

通常のインフレは、需要が旺盛になることで物価が上がる「デマンドプル型」であり、これは好景気と連動しやすいものです。

しかし、今回のインフレは、コストの上昇によって無理やり物価が押し上げられる「コストプッシュ型」の色が強まっています。

ホルムズ海峡周辺では、すでにペルシャ湾の精油所などが破壊される事態が起きており、原油の供給そのものが物理的に減少しています。

さらに地政学的リスクの高まりは海上保険料を跳ね上げ、あらゆる物流コストを増大させています。

このように、需要に関係なく物価だけが上がれば、人々は財布の紐を固くし、消費を抑えます。
その結果、景気がますます悪化するという、1970年代の石油危機の際に見られた悪循環が再現されることが懸念されているのです。

WTI原油先物 日足(SBI証券提供)

WTI原油先物 日足(SBI証券提供)

<AIブームが景気の下支えとなるか>

一方で、1970年代と決定的に異なる要素が「AI」の存在です。

たとえ物価が上がり、一般の消費が冷え込んだとしても、AIの進化は止まりません。
GoogleやMicrosoftといった巨人は、物価に関係なくデータセンターの建設に莫大な投資を続けています。
この勢いが続く限り、ハイテク分野が景気を下支えし、経済がうまく回り続けるというシナリオも考えられます。

しかし、ここにも大きな死角があります。

AIを動かすには膨大な電力が必要であり、原油高は電力コストの直撃を意味します。
エネルギーコストの増大はデータセンターの採算を悪化させ、もしAIのマネタイズ(収益化)が思ったように進まないという懸念が広がれば、現在唯一の希望であるAI関連投資までもが冷え込んでしまう可能性があります。

そうなれば、経済全体が総崩れになるという「八方塞がり」の状態にもなりかねません。

原油高で「避けるべき銘柄」の共通点

投資家がまず警戒すべきは、いわゆる「景気敏感株」や、コスト増を価格に転嫁しにくい企業です。

自動車、家電、家具といった耐久消費財は、物価高によって人々の買い控えが起きやすく、特にガソリンを直接消費する自動車は、今の時期に積極的に買おうという心理にはなりにくいでしょう。

また、化学素材メーカーも厳しい立場にあります。

原油由来の「ナフサ」を原料とするため、原料高がダイレクトに利益を圧迫します。
三菱ケミカルの株価が3月に入ってから軟調なのは、こうした背景を市場が読み取っているからです。

外食産業においても、スカイラークのように今のところ粘っている銘柄もありますが、原料高を価格に転嫁するまでのタイムラグの間、業績が一時的に悪化することは避けられません。

特に「お値段以上」というブランドポリシーを掲げるニトリなどは、コストが増大しても簡単には価格を上げられず、結果として利益が削られる構造にあります。
同社の株価が3月以降に下落し、PERが14.3倍程度まで下がってきたのは、次の決算で見えてくる厳しい見通しを投資家が警戒し始めた証拠と言えるでしょう。

Next: 原油高で「得をする銘柄」は?状況次第で株価が逆回転する可能性も…

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