JALとANAの燃料費感応度を徹底比較
原油高の影響を最もダイレクトに受けるのが航空業界です。
飛行機を飛ばすための燃料費は営業費用の約2割を占めており、原油価格の変動は死活問題となります。
国際線では燃油サーチャージによってある程度コストを転嫁できますが、価格変動を柔軟に反映しにくい国内線の比率が高いと、その分ダメージが蓄積します。
特に注目すべきはJAL(日本航空)とANA(全日本空輸)の違いです。
JALは中東を通る長距離路線の比率が相対的に高く、燃料コストの増大だけでなく、紛争地を回避するためのルート変更によるコスト増の影響も受けやすいと見られています。
ANA側の試算では、原油が1バレル1ドル上がるごとに年間で約2億円の純利益がマイナスになるとされています。
今期の予想純利益1,450億円に対して100億円程度の減益要因となり、一見小さく見えますが、これはサーチャージでの回収を前提とした数字です。
サーチャージによる回収前の数字で見れば、JALは月間で300億円もの利益が削られるという算出もあり、年間では経常利益を全て吹き飛ばしてしまうほどのインパクトになり得るのです。
<中国路線の“棚ぼた”特需>
航空株のチャートを見ると、2月に一時的に大きく上昇する場面がありました。
これには、中国との政治的な緊張関係から生じた奇妙な特需が関係しています。
中国政府が日本への旅行を事実上自粛するよう求めている影響で、中国の航空会社は日本への便を大幅に減らしています。
しかし、それでも日本に行きたいという中国人の需要は根強く、彼らは日本の航空会社、つまりJALやANAを利用するしか選択肢がなくなっているのです。
成田空港の運行状況を見ても、中国便の欠航が相次ぐ中で、日本の航空会社がその枠を代替して「漁夫の利」を得ている状況があります。
こうした「棚ぼた」の利益によって一時的に救われている面はありますが、その後の原油高の影響を考えると、現在の株価はやや楽観視されすぎているという印象を拭えません。
原油高で「得をする銘柄」:INPEX、JAPEX、商社
逆に、この環境下で利益を伸ばせるのは、資源を供給する側の企業です。
代表的なのは、原油を掘って売る「上流事業」を手掛けるINPEXや石油資源開発(JAPEX)です。
採掘コストは急激には上がらないため、原油の売り値が上がれば、その分がほぼダイレクトに利益として積み上がります。
INPEXの株価が3月以降、3,700円付近から4,600円超へと急騰しているのは、まさにこの「資源高の恩恵」を反映した動きです。
総合商社についても、資源に強みを持つ三井物産や三菱商事には強い追い風が吹いています。
三井物産は商社の中でも特に資源特化型であり、株価も右肩上がりを続けています。
一方で、同じ商社でも「非資源」を掲げる伊藤忠商事は、どちらかと言えば消費財やサービスに力を入れているため、景気後退や消費冷え込みの懸念から株価がガタガタと不安定な動きを見せています。
ただし、これらの資源関連銘柄への投資には注意が必要です。
すでに市場は多くの情報を折り込んでおり、現在の価格は「高値掴み」になるリスクも孕んでいます。
もし情勢が急転して和解が進めば、期待が剥落して株価が逆回転する可能性も常に想定しておくべきでしょう。