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なぜバフェットは「守り」に入る?現在の株価は高すぎ?長期投資家が注視すべき市場のシグナル=栫井駿介

今回は、現代の最も偉大な投資家とされるウォーレン・バフェット氏の最新の投資動向と、『投資でいちばん大切な20の教え』の著者であるハワード・マークス氏の現在の市場に対する見解について詳しく解説します。

相場が高騰を続ける中、彼らはいったい何を考え、どのような投資行動を取っているのでしょうか?彼らの動きから、皆さんの投資戦略を考えるヒントを得ていただければ幸いです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

ウォーレン・バフェットの最新戦略:なぜ今「守り」に入るのか?

ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ社の最近の動きは、市場の多くの注目を集めています。結論から言うと、彼は現在、株を「売る」傾向が強く、新規の「買い」は少ない、 いわゆる「純売り越し」の状態が続いています。

<増え続ける現金、売り越しの背景>

バークシャー・ハサウェイが保有する現金および現金同等物(主に国債)は、2024年後半にかけて大きく積み増されており、現在ではなんと約50兆円にものぼります。同社は保険会社を傘下に持つため、保険料収入が現金として積み上がる性質はありますが、それだけではなく、既存の上場株も売却し、現金を手元に増やしているのです。

バフェット氏の投資スタイルをご存知の方ならお分かりのように、彼は株価が大きく下落した時に購入し、株価が高い時には無理に買わず、チャンスを虎視眈々と待つ傾向があります。例えば、2000年頃のITバブル時には、周囲の投資家がIT銘柄に殺到する中で、バフェット氏は頑としてIT銘柄に手を出さず、バブル崩壊後の損失を免れ、その名を確かなものにしました。

このような過去の行動から見ても、バフェット氏が現在株を売却し、現金を積み増しているのは、彼が今の相場を「高い」と見ている可能性が高いと言えるでしょう。

<逆張り投資の象徴:ユナイテッドヘルスの新規購入>

純売り越しの中で、バフェット氏が唯一新規に購入した銘柄がユナイテッドヘルス(UnitedHealth)です。これは、主に医療保険を提供する会社です。

ユナイテッドヘルスの株価は、リーマンショック後から順調に右肩上がりで成長してきましたが、足元では大きく下落し、5年前の水準をも下回る状況にあります。

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出典:macrotrends

これはまさにバフェット氏の「逆張り」戦略の典型と言えます。かつて、アメリカン・エキスプレスが大きな損失を出して潰れると騒がれた際にも、バフェット氏が大量に購入し、その後の回復で大きな成功を収めた事例に似ています。

なぜユナイテッドヘルスは下落したのでしょうか?主な原因は、業績の下方修正です。加入者からの保険金請求が想定よりも多かったため、収益が悪化しました。さらに、CEOの交代も重なり、投資家の不信感が高まり株価が下落しました。

しかし、ユナイテッドヘルスの長期的な業績、特に1株当たり利益(EPS)の推移を見ると、基本的には順調に右肩上がりで成長しています。足元の混乱はあるものの、同社の現在のPERは約13倍と、2016年以降の平均PER(18~19倍)と比較して割安感があります。バフェット氏は、Apple株を本格的に買い始めた2016年当時も、そのPERが12~13倍だった時期を狙っていました。

また、ユナイテッドヘルスは「ディフェンシブ株」に分類されます。医療保険の需要は景気に左右されにくいため、たとえ今後景気が悪化しても、ユナイテッドヘルスなら大丈夫だろうという観点で買われた可能性があります。

実際、バフェット氏が最近買っているのは、消費財や食料品といったディフェンシブ性の高い銘柄が多く、逆に銀行や金融、そして一部のApple株といった景気連動性の高い銘柄は売却しています。これは、バフェット氏が明らかに「守りの姿勢」に入っていることを示唆しています。現在の株価高騰を前にすれば、非常に妥当な動きとも言えるでしょう。

Next: バフェットは負の遺産を残さない戦略か。もう一人の賢人の動きは…

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