日経平均が急上昇しています。バブルの後の最高値を更新し、3万6,000円台をタッチするようになりました。この上昇の背景には、東証の低PBRへの提言、NISA改訂の影響、地震の影響によって金融緩和継続の見立てから円安の期待など、様々な原因が考えられています。私が考える一つの要因は、ユニクロ・ジーユーを運営するファーストリティリング(以下、ファストリ)の好調です。今回は、日経平均に大きな影響を与えるファストリの最新決算を詳しく分析し、今後の成長性と日経平均に与える影響力を考えていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
ファストリが日経平均に与える影響力が大きい
まずは、日経平均とファストリの関係性を説明します。
日経平均はプライム市場に上場している代表的な企業225社の、株価の平均値です。
したがって、1株の値段が大きい値がさ株の影響力が大きいという特徴があります。
23年5月時点の日経平均構成比率トップはファストリです。比率上位の東京エレクトロンやダイキン工業も値がさ株と言えますね。
(実際には、株価が上がり日経平均に与える影響力が大きくなる場合、比率を弱めるように調整されています。参考:キャップ調整比率)
よって、日経平均はファストリの業績(株価)変動の影響を大きく受けるのです。
では、最新のファストリの業績はどうだったのでしょうか?
詳しく分析してみましょう。
最新決算では絶好調……なぜ?
最新の決算は24年8月期の第1四半期決算です。23年9月から11月までの業績です。
売上高が8,108億円(前年同期比+13.2%)、営業利益が1,466億円(同+25.3%)となりました。
これを見てあなたはどう感じますか?私は、好調ぶりに驚きました。
まずは、これだけの大企業でありながら、売上成長率が10%を超えていること。そして売上以上に利益が成長したことが、素晴らしいと思います。
出典:24年8月期 第1四半期 決算説明資料
利益成長のキーワードはSTOP&GO(停止と進行)です。
それは、売上が大きく下ぶれた時に、経費をいかに抑制するか?という視点です。
あなたも実感があると思いますが、昨年23年の9月・10月は気温が高く冬物の販売が軟調でした。その時に組織全体で経費コントロールや発注の停止を行ったのです。そして気温が下がってきた11月頃に機動的な追加生産を行いました。
ファストリの大きな強みは、商品の発注から販売までをコントロールできることです。
製造小売業として、サプライチェーン全体をコントロールしていることから、販売動向に応じた適切なコスト管理ができるのです。
この製造小売のモデルは他のメーカーも行ってはいるものの、その精度と実現性ではファストリが最もレベルが高いと感じます。
では、もう少し詳しく決算を見てみましょう。国内と海外という切り口で決算を分析します。
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