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トヨタ「EV出遅れ」を長期投資家が高く評価する理由。米国市場を制覇する2つのシナリオ=佐々木悠

トヨタ自動車<7203>は日本を代表する企業です。投資家からの注目度も高く、時価総額は43兆円と日本トップ。2位のソニーは15兆円ですから、その巨大さがわかります。24年3月期は過去最高の売上・利益となる予想であり、成長が続いていると言って良いでしょう。しかし、「なんとなくトヨタはヤバい。テスラに負けている」というイメージを持っている方もいるようです。実際はどうなんでしょうか?ここからさらに成長するには何が必要か?トヨタの強さは何なのか?を考えていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

世界最大の販売台数を誇る

「トヨタは世界的な企業だけど、実はそんなにすごくないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、トヨタの車の販売台数は世界トップです。テスラの9倍近くの車を販売しています。

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出典:各社IR/ニュースより作成

そのトヨタが最も車を販売している地域は北米です。ついで日本、アジアと続き世界中で車を販売していることがわかります。

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出典:決算説明資料より作成

トヨタはアメリカでその強さを発揮していると言えます。アメリカ人の中には、トヨタはアメリカの会社である、と勘違いしている人もいるようです。それだけ馴染んでいるとも言えますね。

当然、国内においてもトヨタが販売台数首位です。特に店舗数はトヨタが5,000店を超えているのに対し、ホンダ2,360店、日産1,449店、SUZUKI930店と圧倒していることがわかります。当然販売店が多い方がよく車が売れますから、日本においては盤石の地位と言えるでしょう。

では、なぜトヨタはここまで大きく成長できたのでしょうか?トヨタの特徴を解説します。

トヨタの強みは「トヨタ生産方式」

トヨタが成長できた大きな理由は「トヨタ生産方式」という考え方です。

その主体となっているのがジャストインタイム自働化。

ジャストインタイムとは「必要なものを必要な時に必要な分だけ造る」というものです。注文から生産までの時間をできるかぎり短縮し、さらに在庫も最小限に抑える、という考え方です。

自働化は、「生産ラインが自ら働く仕組みであり、特に異常チェックを厳しく行う」というものです。つまり生産ライン上の作業時間や工程を定め、その決まりから外れ異常が発生した場合は、機械が自動でラインを止めるようになっています。そして、異常が発生した箇所を整備士やエンジニアが調整を行うことで、不良品発生率の低下を図っています。結果的に修理コストなどを低下させ、原価率を下げることに繋がるのです。

これらの考え方によって在庫を少なく、大量生産ができることから、コストを削減し単価を落とすことができます。

結果的にトヨタの営業利益率は、これだけの大企業ながら営業利益率7~9%で推移しています。ホンダや日産は5%前後で推移していますから、効率的な生産・販売体制を確立してることがわかります。

「その戦略は有名だし、ほかの会社も真似してるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。というのも、トヨタが初めてアメリカで工場を建てた際は、この生産方式が全く馴染まなかったようです。その理由は、アメリカ人は「ラインを止めたらクビ」と教育されているため。同じ車の製造でも、会社や国の文化の違いから、海外競合他社が真似できそうで真似できないのがトヨタ生産方式なのです。

そしてトヨタの世界トップの地位を確かなものにしたのはプリウスだと言われています。プリウスは1997年に誕生した、世界初の量産型ハイブリッド車です。当時としては圧倒的な低燃費を実現したこと、さらにそれが手が届く範囲の値段で売り出されたことでヒットしました。

競合他社はその技術に圧倒され、同様のものを作っても単価が高くなるというジレンマを抱えていたと言います。トヨタ生産方式で生まれたハイブリッド車によって、現在の自動車業界トップの座を取ったということです。

しかし、CASEという新たなトレンドが、トヨタを脅かしていると言われます。

それはどんなものなのでしょうか?

Next: 電気自動車の波に乗れたトヨタ…世界の競合メーカーはどう動いている?

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