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中央銀行デジタル通貨が駆逐するドル覇権。各国の導入状況と取り残されるアメリカの苦肉の策=高島康司

中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入による米国覇権の弱体化に対応するため、アメリカがビットコインを政府公認の資産として取り込む可能性が出てきた。CBDCがもたらす影響と、加速するビットコインの資産化について解説したい。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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中央銀行デジタル通貨(CBDC)本格導入へ準備着々

いま中央銀行デジタル通貨(CBDC)の本格的な導入が迫っている。これがもたらす広範な影響と、それによるビットコインの資産化の加速について解説したい。

4月3日、スイスに本部を置く「国際決済銀行(BIS)」は、日本やアメリカ、ヨーロッパなど7つの中央銀行と民間の金融機関が、デジタル通貨を使った実証実験を始めると発表した。国境を越えた決済を簡単にしたり、マネーロンダリング対策に役立てたりする仕組みづくりを目指すとしている。

実証実験には、「BIS」が主導する形で、日銀や「ニューヨーク連邦準備銀行」、イギリスの「イングランド銀行」、それにスイスや韓国、メキシコなど合わせて7つの中央銀行が参加する。

実験では、中央銀行が裏付けしたデジタル通貨を使い、一般の銀行と中央銀行の間でのやり取りや、銀行間の国際的な決済がスムーズにできるかを調査するとしている。

いまのところ、参加各国の「CBDC」導入の時期は決まっていないが、この実証実験で「CBDC」の有効性が認められた場合、各国で導入時期の本格的な検討に入る可能性が高い。早ければ2025年にも、実験に参加した一部の国で導入が進められるのではないかとする観測もある。

各国ですでに始まっている「CBDC」の導入

周知のように「CBDC」の分野でもっとも先行しているのは中国である。

「デジタル人民元」の開発はすでに2014年から始められ、2020年には試用試験を各都市に拡大し、「CBDC」を普及をさせた。そして2024年には、「BIS」が開始した「mBRIDGE」プロジェクトに参加し、「デジタル人民元」による国際決済の実証実験をさかんに行っている。

また、2020年以来、各国でなんらかの導入実験が進められている。その状況を列挙してみると、次のようになる。

<2020年>

・バハマ、「サンド ダラーCBDCプロジェクト」を開始。
・カンボジアの「CBDC」、人口のほぼ半数に拡大。

<2021年>

・セントビンセント、グレナディーン、セントルシア、セントクリストファー・ネイビス、アンティーブ、バルバドス、ドミニカ、モントセラト、グレナダの9 か国が「CBDC」の実証実験。
・ナイジェリアが「電子ナイラ」と呼ばれる「CBDC」の実証実験に取り組む。

<2022年>

・ジャマイカ中央銀行は最初の「CBDC」のパイロットプロジェクトを完了。即時決済システムは2022年2月に開始。

<2023年>

・中国のデジタル人民元ウォレットに2億6000万人の個人ユーザーを記録。
・ジョージア中央銀行は「CBDC」を開始。
・ガーナ中央銀行、「CBDC」パイロットに中央銀行サービスプロバイダー、「G+D」を選択。
・インド、「CBDC」導入計画を発表。
・オーストラリア、マレーシア、シンガポール、南アフリカの中央銀行が国際決済用の「CBDC」を「BISイノベーションハブ」を使ってテストする。
・モーリシャス中央銀行、「CBDC」のパイロットを計画。
・ロシア、12の銀行と「CBDC」である「デジタルルーブル」のパイロットを開始。
・サウジアラビアとUAE、二国間でデジタル通貨実験を開始。
・南アフリカ中央銀行、「CBDC」のテスト開始。
・韓国中央銀行が「CBDC」の実証実験の第一段階を開始。
・スウェーデン中央銀行、「CBDC」の「e-クローナ」の実証実験を開始。
・スイス、「デジタルユーロ」と「デジタルスイスフラン」の実証試験が成功。
・チュニジア中央銀行、「デジタルディナール」の実証実験開始。
・ウクライナ商業銀行、デジタル通貨の実証実験開始。

<2024年>

・ブラジル証券取引所、「デジタルリアル」の実証実験開始。ブラジルの経済大臣は独自の「CBDC」を持つだろうと発言。
・カナダ中央銀行、独自の「CBDC」の導入を検討。
・香港政府、「CBDC」の適用検討。
・イラン、近々「CBDC」を試験導入へ。
・メキシコ政府、「CBDC」を発表。
・ニュージーランド、「CBDC」の調査を開始。
・ノルウェー中央銀行、今後2年間で「CBDC」の技術ソリューションをテストすると発表。
・パラオ共和国、「CBDC」開発へ。
・タイ中央銀行、「CBDC」をテスト。

<2025年以降に予定される動き>

・オーストラリア準備銀行と業界パートナーが商業取引に使える「CBDC」研究プロジェクトを完了。
・チリ中央銀行、「CBDC」発行を検討するチームを設立。
・欧州中央銀行、「デジタルユーロ」の導入に向かう。
・ホンジュラスとグアテマラ、「CBDC」を研究開始。
・イスラエル中央銀行、「デジタルシェケル」の可能性を研究。
・モロッコ、デジタル通貨の開始の可能性に備えるための法的枠組みを準備。
・パキスタン、金融包摂のための「CBDC」を研究。
・パレスチナ中央銀行、「CBDC」の立ち上げを検討。
・ペルー中央銀行が「CBDC」開発への世界的な動きに参加。
・フィリピン中央銀行、「CBDC」を検討。
・ルワンダ、「CBDC」 導入へ。
・シンガポール中央銀行、商業取引に使える「CBDC」の導入検討。
・トリニダード・トバゴ 中央銀行、「CBDC」のユースケースを検討。
・トルコ中央銀行、新しいプラットフォームで「CBDC」である「デジタルリラ」をテスト。
・ジンバブエ政府、「CBDC」への関心を示唆。

いまこのように、「CBDC」への動きは各国でさかんになっている。この状況だと、各国で「CDBC」が導入されるのも時間の問題のように思える。

すると、導入が先行している「デジタル人民元」を中心に、国際決済が「CBDC」で行われるようになる十分な可能性がある。

Next: 揺らぐ米ドル覇権…「デジタルドル」への反対と導入の困難性

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