中国のサイゼリヤが急成長をしています。2023年の売上高は532.17億円となり前年比で44.6%も成長しています。現在、日本のサイゼリヤはコロナ禍以降赤字状態ですが、中国から得られる利益でサイゼリヤ全体が黒字になっている状況です。つまり、中国のみなさんがサイゼリヤに行ってくれるため、私たち日本人はサイゼリヤで安くて美味しいものを食べられているということになります。今回は、サイゼリヤがなぜ中国で受けているのかを読み解き、「安さ」の本質とは何なのかを考えます。(『 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 』牧野武文)
※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2024年7月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『論語なう』(マイナビ新書)、『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』(角川新書)など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。
サイゼリヤ、中国で急成長
中国のサイゼリヤが急成長をしています。2023年の売上高は532.17億円となり前年比で44.6%も成長しています。現在、日本のサイゼリヤはコロナ禍以降赤字状態ですが、中国から得られる利益でサイゼリヤ全体が黒字になっている状況です。
ご承知のとおり、中国の経済低迷は長引き、外食産業は大きな痛手を受けています。ミシュランの星を取るような高級レストランが次々と閉店、倒産をする状況になり、中級クラスの飲食店も業績不振となり、人々は低価格のファストフードに集中をするようになっています。
サイゼリヤは日本では「激安」ということで知られていますが、中国では「激安」とも言えません。客単価は45元で、中華ファストフードの30元前後から比べれば高価格帯になります。日本で言えば、ロイヤルホストなどの価格高めのファミリーレストランの感覚だと思います。
どうやって中国人の胃袋を掴んだのか?
それがなぜ、人々が集まるようになっているのでしょうか。
サイゼリヤがこれまで行なってきた意図的な施策、意図しない施策のすべてが功を奏し、「大勢で楽しく食事ができる」場所として認識されるようになったからです。
食事をとるだけならもっと安いところがいくらでもあります。でも、食事を楽しむのであればサイゼリヤがいちばん安い。そういう認識が生まれ、サイゼリヤよりも高価格帯の西洋レストランの客をどんどん奪っている状況です。
重要なのは、「ただ安ければお客がくる」というわけではないということです。サイゼリヤや食材の生産、加工、流通、調理まですべてを自社で行なうというユニクロのSPAと似たモデルを構築しています。これが食材の安心感、ブランドへの信頼感へとつながって成功しているのです。
「安い」ということは価格の数字が小さければいいというわけではありません。かといって「これが適正価格だ」と売る方が消費者に価格を押し付けてもいいわけではありません。サイゼリヤの中国での成功は、この「安さ」というものを深く考える格好の事例になっています。
今回は、中国でのサイゼリヤについてご紹介します。
中国で儲かっているからこそ、日本の私たちは安く食べられる
中国のサイゼリヤがびっくりするほど成長しています。有価証券報告書によると、2023年の中国売上高は532.17億円となり前年比で44.6%も成長しています。2022年も357.93億円で前年比23.0%の成長です。店舗数は2021年から360、369、380と増加ペースは早くないので、単店売上が大きく上昇をしていることになります。
中国では日本と異なり値上げをしている店舗もありますが、その値上げ幅は小さく、つまりは客数が大幅に増えているということです。
この中国での成長は、サイゼリヤ全体の救世主ともなりました。日本のサイゼリヤも連日大盛況ですが、ポリシーとして値上げをほとんどしていません。一方で、原材料費は高騰をするため利益幅が縮小し、日本セグメントでは赤字になっています。この赤字分を中国セグメントで補っている状況です。
中国のみなさんがサイゼリヤに行ってくれるため、私たち日本人はサイゼリヤで安くて美味しいものを食べられているということになります。
コロナ前は、日本とアジア(中国、台湾、香港、シンガポール)の両輪で利益をあげている構造でしたが、コロナ禍により、日本は赤字転落をし、コロナ禍後はアジアの利益で全体を黒字にしている構造になっています。