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中国から富裕層1万5000人が他国へ移住…反スパイ法と中露接近でお先真っ暗、国ごと沈む前に脱出へ=勝又壽良

中国富裕層は、他国へ移り住む数で世界「断トツ」である。24年は、中国から他国へ移住する富裕層の数が、推定1万5,200人に上る見通しである。23年の1万3,800人を上回ると予測されている。富裕層はこれから起こる中国の「混乱」を回避すべく、早めに移住を始めたと読めるのだ。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

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プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

「スパイ大国」の中国

習近平中国国家主席は、昨年7月に「反スパイ法」によって国家安全を最優先に掲げた。西側諸国のスパイが、中国の安全を危機に陥れているという物騒な理由からだ。

中国のスパイこそ「超一流」である。最近の話題では、フィリピンへ女性スパイを送込んだ一件がある。首都マニラ北部にある「バンバン市長」に当選させたのだ。過去の話だが、ファーウェイの「5G」通信網では、秘かにバックドアを仕込み西側インフラを破壊する大規模「陰謀」が露見する事態まで生んでいる。

このように、中国は自らも広範な陰謀行為を行っている。それだけに、西側諸国から包囲されているとする「被害者意識」を利用し打ち消そうと狙っているのだろう。中国当局は、「反スパイ法」で国内不満分子を摘発する一石二鳥の戦術に利用しているのだ。

反スパイ法はエスカレートしている。この7月から、個人が持つスマートフォンなどの情報機器を調べる権限も得た。緊急時に、警察証などを示すだけで情報機器を検査できるというのだ。外国人は、中国へ入国する際にスマホやパソコンの情報をみられたり、窃取されたりするリスクが発生する。外国人が、中国渡航をためらうのは当然だ。

中国は、西側諸国の人権意識からみれば、明らかに人権無視の行為に映る。西側諸国企業は、中国ビジネスで社員を派遣することで拘束されるなど、とんでもない事態へ巻き込まれる危険性が高まっている。

求められている「メード・イン・ジャパン」

中国へ進出している日本企業は、海外ユーザーから「メード・イン・チャイナ」でなく、「メード・イン・ジャパン」を要請され始めている。中国で生産することの危険性を察知して、日本での生産を要請されているのだ。

このように、中国がこれまで占めてきたサプライチェーンの役割は、急速に色あせてきた。これが、中国輸出の足かせになる。

海外企業による中国対内直接投資(FDI)が、昨年7月の「反スパイ法」以来、減少過程に向っている。中国にとって、海外企業による中国での直接投資は、大きなメリットをもたらす。米ドルの入手と海外企業の技術や経営ノウハウを入手する機会になるからだ。

こういうチャンスが、昨年7月の「反スパイ法」によって、芽を摘むという失策を演じている。具体的な対内直接投資の減少ぶりは、後で詳細に取り上げたい。

反スパイ法と治安維持法

中国の「反スパイ法」は、日本の暗黒部分の歴史と重なっている。習氏は、「反スパイ法」を公布するにあたり何を目的としたのか。それは、中国共産党体制の維持である。もっとハッキリ言えば、習近平氏の政治生命を護ることだ。

日本では、戦前の「治安維持法」がこれに当たる。治安維持法は、1925年(大正14年)に「普通選挙法」と同時に制定された政治弾圧法と理解されている。天皇中心の国家体制を変革しようと画策する共産主義や、資本主義経済を否定する者を処罰できる法律だ。ロシアに共産党革命政権(ソ連)が出現したことへの強い警戒心があった。

この治安維持法は、日本が戦時色を強めるとともに強化され、太平洋戦争を目前に控えた1941年には、国家の方針に従わないという理由だけで取り締まれるようになり、刑罰も重くなった。この悪名高き治安維持法は、敗戦後の1945年10月、連合国軍総司令部の命令により廃止された。日本は、実に20年間も国家権力によって思想と言論の自由を奪われた「暗黒時代」にあった。

中国の「反スパイ法」は、その性格からみて日本の「治安維持法」に匹敵する。これによって,中国がどういう経路を辿るのか大体の見当はつくであろう。「閉鎖経済」への道を歩む危険性である。

Next: 移民となって中国を出ていく富裕層たち。中国経済の末路は?

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