韓国半導体は、メモリーと非メモリー(システム半導体)を合計すると世界2位だが、先端分野の非メモリーではたったの2.9%のシェア(2020年)に過ぎない。恥ずかしくて、とても「半導体強国」とは言えないのだ。なぜ、このようなアンバランスな発展をしたのか?(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)
※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年7月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
日本の半導体技術を盗んで成長した韓国
韓国半導体は、メモリーと非メモリー(システム半導体)を合計すると世界2位だが、メモリー分野では56.9%のシェア(2020年)を占めている。むろん、世界一の「強国」である。だが、先端分野の非メモリーでは、たったの2.9%のシェア(同)に過ぎない。恥ずかしくて、とても「半導体強国」とは言えないのだ。
なぜ、このようなアンバランスな発展をしたのか。
それは、韓国半導体の歴史にある。日本の半導体技術者が毎週、土日の休日を使ってソウルへ行き「アルバイト指導」した結果だ。サムスンは、こういう違法な形で日本の半導体技術を窃取した。これは、私がサムスン創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル、1910~87年)から、日本の私的会合で直接聞いた話である。間違いはない。
1回の出張料は、1ヶ月の月給に匹敵したという。月に4回サムスンへ出向けば、1ヶ月で実に4ヶ月分の月給に匹敵するアルバイト収入が、「無税」で日本の技術者の懐に入った勘定である。日本の給料を含めれば、1ヶ月で5ヶ月分の収入になった。札束で頬をひっぱたかれた形だった。
韓国が「非メモリー」分野で大きく劣るワケ
日本の技術者の懐は大いに潤ったが、日本の半導体産業は後にメモリー分野で韓国に圧倒されることになった。
ただ、日本の技術者は非メモリーの技術を教えることはなかった。こうして、韓国は、先端半導体であるシステム半導体を自力で開発せざるを得ず、その結果が世界シェア3%に止まっている背景だ。
韓国半導体は、歪な形で発展してきただけに、「半導体神話」などと仰々しく言えるはずはない。
現実に、非メモリーでは台湾企業に大きく出遅れている。97.1%は台湾企業の世界シェア(2020年)だ。メモリー分野でも、中国が「ロウエンド」(低級品)分野のシェア向上を狙って、巨額投資を行なっている。世界中から中古の「ロウエンド」半導体製造装置を買い集めているのだ。
韓国は将来、メモリー分野で競合しかねないだけに、安閑としていられないだろう。
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