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夢に終わる韓国「半導体超強大国」戦略。日本から盗めなかったシステム半導体に“世界シェア3%”の壁=勝又壽良

韓国は「チップ4」への参加に足踏みするワケ

半導体業界団体SEMIによると、中国は2024年までの4年間に31の「ファブ」と呼ばれる大型半導体製造工場を建設する予定だ。これは同期間に、2番目に多い19の半導体工場を建設する台湾や、12の工場を予定する米国を大きく上回る。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月25日付)が報じた。

中国は、高度な半導体に関して米国や台湾、韓国の半導体メーカーに追いつけずにいる。欧米諸国が中国の先進的な半導体製造装置へのアクセスを制限していることも、中国が後れを取る一因だ。中国メーカーの一部は方針を見直し、ローエンド(低性能)の半導体技術への集中を加速させているのだ。

中国が当面、非メモリー半導体への進出を諦めて、メモリー半導体へ特化しようとしている。となると、韓国の「牙城」が部分的にせよ、荒らされるリスクが高まる。こうして、韓国の「自衛策」が問われる段階になる。

韓国は、中国の市場を捨てがたいと逡巡している。これは、韓国半導体の将来を誤るであろう。韓国は、「チップ4」の仲間として、自由主義諸国の市場を固めることの方がはるかに有利だ。現在の韓国には、不思議に「チップ4」で生きることのメリットを理解できず、右往左往している。

台湾半導体ビジネスも、韓国と同様の立場にある。中国と米国の双方を主要市場としているからだ。台湾が、将来も引き続き米中双方を相手に半導体ビジネスができるのか。米中対立激化でそれは、「不可能」と見るほかない。ファーウェイに対する制裁のように結局、台湾は米国を選ぶほかなかった。安全保障が、国家存立の基盤であるからだ。

こうなると、韓国も「チップ4」へ加入せざるを得ないであろう。韓国は、「チップ4」を通じて得られる次世代半導体技術がはるかに有利なはずである。中国と将来、「ロウエンド」メモリーで競合するよりも、量子コンピュータなど「量子ICT技術」分野で、米国主導のサプライチェーンに加わり標準と技術資産を受け継ぐことが有利であると指摘されているのだ。

後から振り返った時に「チップ4」参加は、「成功だった」という評価に繋がるはずである。この認識は、韓国で少数派である。依然として、中国市場への未練に取り憑かれているのだ。

新政権は積極姿勢へ

韓国は、今年8月末までに米国へ「チップ4」参加の諾否を答える予定だが今、右往左往している。

一方で、ユン政権が最近「半導体産業の発展戦略」を発表した。文政権も2019年に、「システム半導体発展戦略」を発表している。

文政権時の主な内容は、次のようなものだった。

1)システム半導体の高級・専門人材1.7万人養成(2030年まで)目標。
2)次世代半導体技術確保のため今後10年間1兆ウォン以上投資予定。

文政権は、基本的には「反企業主義」であった。できるだけ、企業と関わることを避けるという政治スタンスを貫いていたのだ。それが、産業育成へと舵を切ったのは、韓国経済の行き詰まり兆候が増えてきた結果である。それでも文政権は、半導体工場新設に対して電気供給などの面で協力せず、成り行き任せであった。

新政権では、前政権の消極姿勢を覆して業界と話し合い、以下のような方針を立てた。

1)2030年までにシステム半導体の世界シェアを3%から10%に高める
2)素材・部品・装置の自立化率も30%から50%にそれぞれ高める。
3)サムスンやSKハイニックスなどの業界は、R&D(研究開発)と設備投資に、26年までに約340兆ウォンを投資する。
4)政府は、企業投資が適時に執行されるよう、半導体産業団地に電力・用水などの必須インフラの構築を支援する。
5)半導体工場に規制特例を適用して、最大容積率を従来よりも1.4倍高める。

以上のうち、(1)〜(3)は業界の努力目標。(4)〜(5)は、政府の支援策である。

新政権は、半導体企業を積極的に支援し、業界が2026年までに340兆ウォン(約35兆8,500億円)以上の投資を達成するとの目標を掲げた。政府は、税制支援をはじめ、労働規制の緩和や迅速な許認可、人材育成など全面的な支援に乗り出す。

文政権の「事なかれ主義」の半導体支援に比べれば、積極的である。

Next: 韓国は自力でシステム半導体を開発できるか?

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