日本経済が長期にわたって低迷していることで、経済が長期にわたって停滞したり、デフレ環境が続くことが「日本化現象」と呼ばれるようになった。そして今、世界が懸念していることの1つは、中国経済が急速に「日本化」してきていることだ。低迷初期の日本経済と、今の中国経済の共通点はいくつかある。(『 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』矢口新)
※本記事は矢口新さんのメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2024年1月29日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
中国経済の「日本化」を示す3つの兆候
日本経済が長期にわたって低迷していることで、経済が長期にわたって停滞したり、デフレ環境が続くことが、「日本化現象」と呼ばれるようになった。
そして今、世界が懸念していることの1つは、中国経済が急速に「日本化」してきていることだ。
低迷初期の日本経済と、今の中国経済の共通点はいくつかある。以下などだ。
1. 米国からの圧力が低迷の引き金となった
2. 株価が(2021年2月の)ピークから半減している
3. 過剰な不動産投資が破綻しつつある
<共通点その1:米国からの圧力が低迷の引き金となった>
日本の場合は、象徴的な1985年のプラザ合意に始まる一連の継続的な外圧を指す。
中国の場合は、米中の経済交流を推し進めてきたヘンリー・キッシンジャーが2011年1月に一転して、「米中両国が冷戦状態に入りつつある」と警鐘したことに始まっている。同年に中国のGDPが日本を抜いて、米国経済の当面のライバルになったことが要因だと思われる。
米国が中国との経済交流を重視した背景は、潜在的な巨大市場であったこと。安価な労働力が得られたこと。中国をソ連から引き離すこと。そして、増長気味だった日本のライバル育成だ。
米国は日本を利用して中国を育成するという一石二鳥の政策を採った。それが、ソ連が崩壊し、中国経済が日本を抜き、米国の対中赤字が拡大したことで、「事情が変わってきた」のだ。
<共通点その2:株価が(2021年2月の)ピークから半減している>
それぞれの状況は大きく違うが、株価の下落だけが共通していると言える。
関連データとすれば、中国株に投資している14の米年金基金のほとんどが2020年以降に保有株を減らしている。また、2023年の中国への海外からの直接投資は前年比8.0%減の1兆1,300億元(1,571億ドル)だった。前年割れは2012年以来となる。
<共通点その3:過剰な不動産投資が破綻しつつある>
これについての一例は、中国2023年12月の不動産大手100社新築住宅販売額は前年比34.6%減の4,513億元(約8兆9,650億円)で、11月の29.6%減から悪化したようなことだ。不動産デベロッパーや、関連金融機関の破綻も出始めている。
こうした市況悪化の最も大きな原因は過剰投資だ。政府の後押しもあって、これまでの住宅購入層はすでに2、3軒所有していることさえ珍しくない。現在、市場全体では1億5,000万人分の在庫を抱えているとされるが、中国でも人口減が始まっているうえに、未購入層の収入は不安定で、若者の失業率が高止まりしている状態では、在庫がはける見込みが立たない。空き家が急増している一方で、大卒者たちの多くが1部屋で共同生活しているのが現状なのだ。
これは、不動産関連企業の収益が今後も改善せず、債務返済が困難になることを示唆している。また、購入資金を払い込みながら住宅の完成が大幅に遅延しているようなケースでは、金利と現在の住居の家賃の二重払いが生じており、購入者の個人破産も増えている。