異次元の少子化対策と銘打って、児童手当をばらまいている岸田政権ですが、出生数は一向に増えず、特殊出生率も最低水準を更新しています。その一方で、少子化対策に使う費用の捻出に苦慮し、ついには後期高齢者の医療費負担の引き上げなど、社会保険料負担の引き上げで賄おうとしています。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年6月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
高齢者の支持も失いつつある自民党
異次元の少子化対策と銘打って、児童手当をばらまいている岸田政権ですが、出生数は一向に増えず、特殊出生率も最低水準を更新しています。
その一方で、少子化対策に使う費用の捻出に苦慮し、ついには後期高齢者の医療費負担の引き上げなど、社会保険料負担の引き上げで賄おうとしています。
少子化対策の財源として高齢者を中心に、社会保険料負担という疑似増税によって賄う姿勢は、これまで自民党支持の多かった高齢者を敵に回しています。
先の3補選の全敗に続いて、静岡知事選、目黒区の都議会補選と続けざまに自民党が敗北している裏には、政治資金規正法の改正に真摯な姿勢が見えないばかりか、高齢化社会の中で高齢者をないがしろにする政治への批判も少なくなかったとみられます。
子どもに厚く年寄りに冷たい政治
金融広報委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、60代・70代世帯の約20%が無貯蓄世帯(決済用の預金以外の貯蓄なし)と言います。
そして65歳以上世帯で公的年金だけで生活する世帯は48%で、残る半分は仕事などで補っています。このため65歳を過ぎても働く人が増えています。
内閣府の「高齢社会白書」によると、65歳以上の労働参加率は、2005年の7.6%から2021年には13.4%に高まっています。
それだけ65歳を過ぎて働く人が増えている「高齢労働者社会」になっているのですが、失業保険給付は65歳までで、65歳を過ぎた人への失業保険は給付されず、特別給付金として50日分が支給されるだけです。
年金支給開始年齢を引き上げようとして、高齢者の就労を推進していますが、その割に雇用保険制度は昔のままで、長年雇用保険を払い続けていながら、65歳を過ぎて失業しても失業保険はもらえません。そればかりか、子育て支援にばらまく資金の手当てが「増税」で確保できないと、高齢者を中心に社会保険料の引き上げで賄おうとしています。