5割に迫る国民負担率
岸田総理は常々国民負担率、つまり税負担率と社会保険負担率を合わせたものは上げないと言っていますが、ここまでは着実に上昇しています。1990年の国民負担率は38.4%でしたが、90年代にはバブル崩壊で経済が悪化したため、時の政権は減税を繰り返したため、2002年の国民負担率は35.0%まで低下しました。
しかし、その後は一貫して負担率が上昇し、2012年には39.8%に、そして直近の実績2022年度の国民負担率は48.4%と、5割に接近しました。税負担率が20年前の21.2%から29.4%に高まったのに加え、社会保険料負担が13.9%から19.0%に高まったためです。
そして岸田総理は防衛費43兆円の財源として増税を打ち出し、国民から「増税メガネ」と批判されたことから、増税には慎重になり、その後は資金手当ての際、社会保険料引き上げによる「実質増税」に傾斜するようになりました。増税では国会で議論した場合、反発が強いのに対し、社会保険料については国会審議もろくにしないまま、制度として勝手に決められる面があるためです。
そして前述したように、少子化対策としての児童手当バラマキ財源として、後期高齢者の医療費負担増を使おうとして、高齢者から反発を食らいました。そして国民総負担のうち、社会保険料の形で負担する分は、1990年当時では27.6%で約4分の1でしたが、2022年度では39.3%と、約4割を賄う形になっています。
政治的には税金より安易に徴求できる社会保険料負担に傾斜しがちですが、税金と違い、社会保険料負担は、介護保険料であれ、国民健康保険料負担であれ、低所得層もすべからく負担させられます。
税金の場合は国税、住民税ともに一定の所得水準以下の人は課税されませんが、社会保険料は住民税非課税世帯も負担させられます。年間100万円未満の年金で暮らしている人も、社会保険料は負担します。
老後の不安が少子化の一因にも
このところ高齢者の負担のもとに少子化対策が打たれ、児童手当は富裕層にも等しく配布されています。それでも日本の特殊出生率は世界でも韓国、台湾などと最下位争いを余儀なくされる状況にあります。いずれも1.3前後の低位にあります。そしてこれらに共通しているのが高齢化の進展です。
出生率の高い国はアフリカの国や島嶼国に集中していますが、先進国の中でもノルウェーの1.8台、デンマーク、フィンランドの1.7台、スウェーデンの1.6台と、北欧の国で比較的高い水準を維持しています。これらの国に共通しているのは、高福祉で、老後の不安が少ない地域です。
東アジアの国では中国も含めて、急速に高齢化が進み、老後の不安が高い国々で結婚件数や出生率の低下がみられる点が注目されます。老後の不安をさらに高めるような少子化対策は、却って少子化を促す面があるかもしれません。






