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本当に怖い円安…なぜ日本はこんなに貧しくなったのか?円の価値が下がり続ける理由と私たちの末路=岩崎博充

相変わらず「日本円」が弱い。ついには直近で、およそ38年ぶりに1ドル=161円台前半まで値下がりした。2年半前の2022年1月年初のドル円のレートは「1ドル=115円」だった。1ドル当たり45円も上昇したことになる。

自国の為替レートが下落したことで受ける影響は、実は我々の考えるよりもずっと大きい。例えば、日本のGDP(国内総生産)は2023年にはドイツに抜かれて世界第4位になったが、これも為替レートの下落によるところが大きい。円安は、物価高をもたらすだけではなく、企業活動や金融の世界にも暗い影を落とし始めている。

マクドナルドのハンバーガーの価格を国際比較した「ビッグマック指数」を見ても、日本は世界で44位。450円のビッグマックが米国(793円)や英国(766円)に比べて激安になっている。円安の影響をストレートに反映している。なぜ、円はここまで安くなっているのか……。その背景には何があるのか……。円安の原因を考えながら、その影響について検証してみたい。(岩崎博充)

プロフィール:岩崎博充(いわさき ひろみつ)
経済ジャーナリスト、雑誌編集者等を経て1980年に独立。以後、フリーのジャーナリストとして主として金融、経済をテーマに執筆。著書に『「年金20万・貯金1000万」でどう生きるか – 60歳からのマネー防衛術』(ワニブックスPLUS新書)、『トランプ政権でこうなる!日本経済』(あさ出版)ほか多数

【関連】「円弱」で搾取される日本人。円安になればなるほど引き起こされる地獄絵図を私たちはまだ知らない=鈴木傾城

日米金利差だけでは説明できない円安

為替レートが変動する要因には様々な要素がある。長期的に見るのか、短期的に判断するのかによっても、大きくその意味は違ってくる。たとえば、今回の円安を説明する言葉として指摘されているのが「日米金利差」だが、金利の違いによって為替レートが動くのは、短期的な変動に限られることが多い。

新型コロナウィルスやロシアによるウクライナ侵攻などが原因で、世界中の物価が上昇したことはよく知られている。物価高=インフレに対応するために、米国の中央銀行である「FRB(連邦制度準備理事会)」は、一気に5.5%まで政策金利を上昇させ、他の国々も金利を一斉に上昇させた。

日本だけがマイナス金利政策にこだわり、最近になってやっとマイナス金利から脱却したものの、依然としてゼロ金利政策からは抜け出ていない。アメリカを始めとする他の国々とも大きな金利差が発生してしまい、その影響で円だけが「独歩安」になった。とは言え、今回の円安はそれだけでは説明できないものがある。

米ドル/円 週足(SBI証券提供)

米ドル/円 週足(SBI証券提供)

なぜ日本はいつまでもマイナス金利にこだわったのか……。

その背景には莫大な財政赤字を抱え、日本政府が発行する国債を中央銀行が購入しなければならなかった、日本独特のリスクがあったからだ。世界中の投資家はその状況を見抜いており、市場は一斉に円安に動いたと考えるのが自然だ。

そういう意味で言えば、本当の円安の原因は日本政府が作った財政赤字であり、現在でもいまだに日銀は、金利の上昇を防ぐために、毎月6兆円の国債を政府から購入しなければならない状況に陥っている。

加えて、日本経済全体の地盤沈下も円安に拍車をかけたと言っていい。日本経済の生産性の低さは世界的にも有名だが、その背景には様々な要因があり、簡単に解決できるものではない。

とりわけ最近目立つのが、社会全体のデジタル化への転換の後れだ。日本に先駆けてデジタル化を推進するアジア諸国にさえも、日本は経済全体で負けつつあるとも言える。

政治資金ひとつデジタル化できない政治家には失望感が広がっているし、行政や裁判も一向にデジタル化ができない。マイナンバーカードの有効期限更新にわざわざ役所に行く必要があるのは仕方がないにしても、そこで行われる手続きは、ペーパーへの記入と署名が必要になる。何のためのデジタル化なのか、理解しがたい。

さらに、中小企業を中心とする産業構造にも大きな問題があり、デジタル化を進めるだけの体力や人材が不足しているために、日本企業はますます遅れをとっている。最近になって、やっと日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新したものの、その後、海外からの投資家が日本株を積極的に買おうと言う姿勢はあまり見られない。日本株を買っても、円安で損失が出てしまうからだ。

日本経済が抱える複合的な要因が、円安になって現れていると言っていいのかもしれない。

Next: なぜ円安が加速?金利差、財政赤字、景気の長期低迷、そのほかにも…

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