円安と物価高で、2024年の倒産件数は1万件突破も視野に入っているほど深刻になっているのだが、行き過ぎた円安が引き起こす危険な面を多くの人は理解していないと思うので、ここでひとまず、それがどれだけ問題があるのかを列挙してみたい。地獄絵図を理解してほしい。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
これは「円安」ではなくて「円弱」ではないか
私自身は、ドル円レート1ドル70円台の2012年に資産のほぼすべてをドル資産に変えた。そのため、円安になればなるほど私の資産は増える。そういう意味で、私は円安になっても困ることはない。
というよりも、円安になればなるほど私の資産は増えるのだから、円安を待望するインセンティブがあるともいえる。
しかし、私は日本人であり、日本がふたたび経済的にまともな国になったらよろこんでドル資産を円資産に戻したい。円の経済圏で生きているのだから、円を保有したいのは当然のことでもある。
ただ残念ながら、今の政治状況を見ると安心して資産を日本に戻せるような政治状況・経済状況にはなっていない。将来もそうなるのかどうかとても懐疑的だ。
日本の大きな社会問題は少子高齢化であり、増税や社会保険料の引き上げが繰り返し議論になって国民負担率も50%近い状態になってしまっている。これは、ひとえに今の政治家たちが少子高齢化問題を30年以上も放置してきたからでもある。
結果として日本は社会が停滞し、イノベーションも失い、やがては内需も失い、円の価値も喪失して、もっとひどい経済状況になってしまうだろう。
それはすなわち、小手先ではどうしようもない「取り返しのつかない円安」がくるということに他ならない。
円は、国家間の貿易で揺れ動く為替レートとしての側面とは別に、国力の価値を指し示す側面もある。国が強くなればなるほど、通貨も信用ができて強くなる。その逆も然りだ。
日本は国が弱体化していくのであれば、円の価値も弱体化していく。今の円安はそういう側面もでてきているのではないかと見る人も増えてきた。そのため、これは「円安」ではなくて「円弱」ではないかと述べる人もいる。
円安が引き起こす危険な面を多くの人は理解していない
為替は金利で説明できるので、金利が上げたらすぐにでも円高になる。しかし、金利を上げたら、企業活動の停滞・住宅ローンの返済苦、株価の暴落、日銀の金利負担増で日本経済の首が絞まる。
国民の資産を新NISAに誘導し、金利を上げて株価が暴落したら、さすがに温厚な日本人も「岸田にハメられた」と激怒して岸田首相も物理的に吊し上げられるだろう。
金利のコントロールができないというのであれば、日本は金利政策ができないほど経済が脆弱化しているということなのだから、「円安」ではなくて「円弱」という考えかたが出てきても奇異ではない。
日本という国の弱体化による通貨安が起きているのだとしたら、これは非常に由々しき問題であるともいえる。私自身は今の円安は行き過ぎな面もあると思っているので、まだ円高に戻せる体力はあると思っているが、どうなるのかはよく状況を観察しておきたい。
ちなみに、円安になったら、一部の輸出企業が儲かるとか、ドル資産を持った富裕層が儲かるとか、株式を保有している投資家が儲かるとか、そういう局面もあるので「円安も良い面がある」と煽る人もいる。それこそ「円は1ドル300円になってもいい」とか極論をいう人もいる。
しかし、物事には表があれば裏もあるわけで、そういう人は「行き過ぎた円安が引き起こす暗い面」をまったく無視しており、とても危険だ。
改めていうが、私自身は円安になればなるほど資産が増える。そうであっても、行き過ぎた円安なんかまったく望んでいない。自分の資産が増えるからもっと円安になればいいというのは、それこそ売国奴の発想である。