金利差、財政赤字、景気の長期低迷……「+α」があるのか?
日本円が安い理由は、単純な金利差や日本経済の低迷以外にもいろいろとありそうな予感がする。例えば、現在指摘されている円安の要因には、次のようなものがある。
- 米金利差の長期化
- 日本政府の財政赤字
- 日本経済の長期低迷
- 日本の経常収支の構造的変化
- 投機的な円売り圧力の高まり
これらの要因は、様々な形で取り上げられているのだが、日米金利差は米国の景気動向に左右されることが多く、米国経済が依然として強く、インフレが続いているために金利差が縮まらず、円安に加速がかかったことは確かだ。
財政赤字は、日銀が日本政府の発行する国債を買い支えなければ、政府が発行する国債を市場が消化しきれずに、金利があっという間に上昇する事態を生み出してしまう。最悪、国債の発行に伴うコストを上昇させ、政府は資金繰りに直面して債務不履行に陥るかもしれない。
にもかかわらず、現在の政権には財政危機に対する危機感が欠如しており、財源のない国民に受けそうな政策ばかりを乱発している。選挙対策用のポピュリズム政策を繰り返しており、財政赤字を解消しようという気はさらさらないようだ。これは政権与党の一部に財政赤字による間違った考えが長期に渡って続いたためだが、少なくとも、日本の政治家は「財政赤字=日本の破綻」というリスクを、まったく無視してきた結果と言っても良い。
円安はそうした政府の財政に対するツケであり、副産物と言える。この負の悪循環を食い止められなければ、日本は本当に破綻するかもしれない。そういう意味では政権交代ぐらいしか、今の日本を救う道は無いのかもしれない。
一方、日本企業も新しい事業を展開するにしても、政府の補助金を頼りにスタートさせると言った姿勢が強く、政府べったりの日本的経営を繰り返してきた。その結果が国際競争力を失った企業の状況と言っていい。スイスの「IMD(国際経営開発研究所)」が発表している「世界競争力ランキング」でも、2023年に日本はついに64か国中35位にまで下落した。これは、台湾(6位)や香港(7位)、中国(21位)、韓国(28位)、インドネシア(34位)など、アジアの周辺国にも大きく後れを取っている。
さらに、無視できないのは円安の要因(5)として挙げた「投機的な円売り圧力の高まり」だ。投機筋の先物建玉がわかるCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)の「IMM通貨先物ポジション」を見ても、ここ1年ほどは、10万枚以上の円売り(ショート)ポジションが大半を占めている。投資家が円を売ろうとしている証と言っていい。
この背景には、日本政府と日銀が急激な円安に対応する手段を持っていないことを投資家が見抜いているからともいえる。日銀は、国際的には極めて特異でいびつな状態で、日本国債を月額6兆円も購入しなければならない状態に陥っている。
そんな状態なのに、いまだに政治家や有識者の一部が日本の財政拡大論を声高に叫び続けている。極端な言い方をすれば、現在の円安は日本政府のデフォルト(債務不履行)や日銀の債務超過リスクを見越した動きであり、これを止める術はそう簡単に見つかりそうもない。









