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介護をしたって有利にならない。遺言書が無効になったケースも…遺産相続で親族と揉めた結果、死人に口無しとはこのことか?

大切な人が亡くなったとき喪失感で何も手につかない中で、トラブルの原因が潜んでいることもある。いわゆる「遺産相続問題」だ。結果オーライになる場合もあるかもしれないが、親族間で予期せぬトラブルになったという話も珍しくない。今回、実際に遺産相続で揉めた経験のある人たちに話を聞いてみると、「介護をしていたにもかかわらず一銭も受け取れなかった」なんてケースもあるようだ。そんな揉め事は避けたいものだが、介護の末、看取った後でも後悔が残るという声が聞こえたきた。

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ケース1:遺言書がなく実弟と対立、均等に分配することに

image by:photoAC

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父が生前、長男である私に全ての不動産を相続すると約束していましたが、遺言書がありませんでした。そのため法定相続分に従って均等に分配することになり、弟と対立。私はずっと父の介護をしていたのですが、弟は介護に関わっていません。なのに「法律だから」と言って平等に分けることを主張されたので反論し、話し合いはかなり長引いてしまいました。

当時、弟と口論になり、互いに感情的になっていたと思います。私からすると弟は父の介護を全くしていなかったくせに、法定相続分を主張するのは筋がちがうと思ったので調停にまで発展しました。結局は弁護士を立てて遺産分割協議を行い、不動産は売却して現金化。均等に分配することで決着しました。

遺言書さえあれば揉めなかったかも

私が受け取ったのは金額にして2,000万円ほど。その内訳としては不動産の売却益は兄弟2人で等分しました。父の介護を一手に引き受けてきた自分としては、法定相続分通りの分配には納得がいきませんでしたが、血を分けた兄弟ですし仕方がないと妥協。生前の父は私に全てを相続させる意向があるとは言っていたものの、やはり書面で残していなかったため、法律に則った分配となり、父の本心とは異なる結果になってしまったのかもしれません。

不動産を売却するにあたり、私は残したいという気持ちがありましたが、その意向は反映されませんでした。介護をしていたときは正直、金銭的にも精神的にも疲弊していましたが弟はわかってくれず、説得するのも難しかったです。父が生きている時に生前贈与があればまだ兄弟で揉めることもなかったかもしれませんが、不動産などは父名義のままで、遺言書もないということでこのような結果になりました。

やはり父の意向を書面で残しておくべきだったと後悔しています。介護を頑張ってきたのに法定相続分で分けるのは納得いきません。せめて遺言書さえあれば、弟を説得するのも容易だったはずですし、生前から家族でもっと話し合いを持つ必要があったと反省しました。

ケース2:介護をしたのに一銭も受け取れなかった

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祖父が亡くなった時に、叔父が私の父親が相続で揉めたので間に入りました。叔父の主張としては「自分の家で祖父と一緒に住んでたから財産は全て自分のものだ」とのこと。住んでいたのは叔父かもしれませんが、近くに住んで通いながら介護をしていたのはこちらです。

祖父が亡くなった時、直筆で遺言書を残してくれていました。その内容は、相続に関する事で、財産を全てこちら(私の父親側)の家に引き渡すという内容でした。しかし、その遺言書の事はいっさい聞き入れず、叔父は祖父のお金を勝手に使っていて……。それでも自分は何も悪くないという主張でした。でも結果としては、私たち親子は一銭も受け取っていません。叔父はいつもその話になると耳を背け、怒鳴り散らし、何も聞く耳を持つ事なく全てが中途半端な話し合いで終わってしまい、土地も含めて何も入っていません。こちら側が疲弊して折れた感じです。

揉めた相手の罵詈雑言に疲弊。裁判すればよかったと後悔

叔父が遺言書の内容をすんなりと理解してくれれば話は早かったかもしれませんが、内容をいっさい認めることなく、何度も怒鳴り散らされ文句を言われるようになったので、関係はますます悪化するようになりました。

祖父の介護はうちの家族、主に母親がしていました。自分も仕事で忙しい時に母親に介護を代わってもらったときもあるので本当に助かっていました。もしかしたら祖父からすると、介護してくれて最後まで面倒をみたうちの家族のために、恩返しのようなかたちで遺言書を書いてくれて、少しでも財産を残してあげたいと思ったのかもしれません。

まず遺言書には、今まで自分の介護に対する感謝の気持ちが綴られていました。次に土地や通帳の事について、最後は葬式の事やお墓の事などが書かれていて、そして感謝の言葉で締め括られていました。読んだ時は涙が止まりませんでしたが、私たちも祖父を気持ちよく天国へ送ってあげられたので、よかったと思っています。でも、それはそれです。お金を使ってでも、弁護士をたてて裁判すれば良かったのかもしれないという後悔だけがいまだに強く残っています。

ケース3:遺言書に法的な効力がない場合も

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祖母の遺産について、母方の兄弟たち(私にとっては叔父)とトラブルになりました。祖母は遺言書を残していましたが、法的な効力を持たなかったんです。同居して介護をすべて担っていたのは私たち(母と私)なのですが、遠方に住むその兄弟が法定相続を求めてきて揉めてしまいました。遺言書は、同居していた家族にほぼほぼ残すという内容で、他の兄弟は遠方なので葬式に来た際の旅費程度。ただ「押印」が無かったため、法的効力はなかったんです。

叔父たちが遠方に住んでいることもあり、電話での話し合いや書類の郵送のみで進めることに。当時、一時は裁判になるところまで話は進んでいましたが、結局、生前贈与などが私たちにもあったということで、こちらが折れる形で法定相続で決着しました。ただ、兄弟間のわだかまりは強く残ってしまったようです。

分配後、現金200万ほどと今の住んでいる家(築年数50年以上)、本人の所持していた貴金属や衣類など、向こうからの要求もなかったのでそのままこちらのものになりました。遺品整理なども少しずつ進め、数万円程度になりましたが、叔父たちから話がきたときは「あなたたち介護してないじゃん」と思ったのが正直な話です。

介護分が考慮されないケースも

なぜか叔父たち本人ではなく、その奥さんが一番騒いでいたと思います。どうやら数年前に祖母に会ったとき、本人から「いくらくらい手元に残っている」などと話を聞いていた様子です。それを当てにしていたためか、コロナ禍で合わなかった数年で目減りしていたことや同居家族に生前贈与していたこと、同居家族に多く残すという遺言書もあり、想像よりかなり少ない額を提示され逆鱗に触れたのかもしれません。

不動産自体はそこまで価値のあるものではなかったこともあり、遠方の兄弟は放棄してくれました。晩年はほぼ全介助の状態でしたが、数年会っていない叔父たちには理解してもらえず、結局介護の分は考慮されませんでした。

ケース4:介護をしていた姉、金銭面で援助をしていた妹

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母の介護は、同居していた姉が中心に行なっていました。母が他界した際、姉は介護の負担が大きかったとして、法定相続分以上の取り分を要求。一方私は、定期的に母の見舞いに行き、金銭的にも援助していたため、姉の主張は認められないと反発しました。

姉は母の介護を担った功績は法定相続分とは別に評価されるべきだと主張し、譲りませんでしたが、私も姉への金銭的援助の事実を示し、法定相続分通りの分割を求めて対立。口論の末、実家で遺品整理をしていた際に、姉に大声で怒鳴られ、実力行使をほのめかされる一幕もありました。

結局、弁護士を交えて話し合うことに。その結果、姉の介護負担を一定程度認め、姉に3割増しの取り分を与えることで決着しました。母の遺産は1,000万円ほどだったので、私の取り分は350万円ほどです。

もちろん母の介護を姉任せきりにしていたことを反省しています。姉の負担を軽減するためにもっと頻繁に実家に通うべきでしたし、協力し合う姿勢に欠けていたように思うこともあります。母を看取った姉の心労は察するに余りありますが、それを金銭的に解決しようとしたのは賢明ではなかったかもしれません。

残ったのは350万円と姉との絶縁

しかし姉は母名義の預金を事前に使い込んでいたようで……。そのことを指摘しても、姉は介護の対価だと言い張るばかりで、建設的な話し合いはできませんでした。母は生前、私にも姉にも特に贈与はしておらず、遺言書も残していませんでした。

万が一に備えて、遺言書は作成しておいてもらいたかったです。母の意思が明確でなかったことも、姉との争いが長引いた原因の一つだと思いますし、介護への姉の貢献度合いを、生前から家族でしっかり話し合っておくべきでした。そうすれば、遺産分割の際にもめずに済んだはずです。姉との関係性は特に改善されることもなく、絶縁状態です。解決した問題もあったと思うので、事前に弁護士や第三者に相談しておくべきでした。

−−三者三様の遺産相続問題。介護をしていた当事者からすると、せめて「遺言書さえあれば」という話もあったが、遺言書があったとて法的効力がないケースもある様子。親族でスムーズに話し合いができれば良いものの、これから先もトラブルが増えそうな予感がする重要な問題である。気持ちよく見届けたあとのことを考えるのは、残された人たちだけなのだろうか。

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