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中国から富裕層1万5000人が他国へ移住…反スパイ法と中露接近でお先真っ暗、国ごと沈む前に脱出へ=勝又壽良

中国の李強首相は6月25日、中国で開幕した「夏季ダボス会議」で演説した。外資企業に、「中国は開かれた大市場だ」と説いて自国への投資を訴えたのである。

李氏は、「グローバル企業と中国企業は、公正な競争環境下で交流・協力し、新興産業の発展に重要な役割を果たせる」と話した。企業の市場参入と公正な競争にかかわる制限の撤廃に尽力しているとも述べ、規制緩和を強調したのだ。

李氏の演説効果は、7月1日からの「反スパイ法」強化で帳消しにされてしまった。中国行政では、反スパイ法の大元締めである国家安全省が全てを牛耳っている。昨年7月施行の「反スパイ法」が、国家安全当局の権限を拡大したのである。

スパイ行為の定義を広げ、「国家の安全と利益」に関わる情報提供などを幅広く取り締まれるようにした。スパイの疑いがあるだけで、手荷物や電子機器を調べられるのは、戦前日本の警察が国民に向って「オイ、コラ」と、一方的に権限を使える時代と瓜二つなのだ。

富裕層の大量移民

「反スパイ法」は、中国富裕層を大量に出国させている背景になっている。

中国が完全な「警察国家」に成り下がっており、富裕層といえどもその地位は安泰でなくなったのだ。特に、習氏が「共同富裕」の社会構築を旗印に掲げたことから、いずれ富裕層の財産を没収して、貧困層へ分配するリスクを身近に感じるようになっている。すでに、官憲が絶対的な権力を振るっている現在、次に来るのは財産没収と読んでいるのだ。

中国富裕層は、他国へ移り住む数で世界「断トツ」である。24年は、中国から他国へ移住する富裕層の数が、推定1万5,200人に上る見通しである。23年の1万3,800人を上回ると予測されている。『フィナンシャルタイムズ』(FT)が報じた。

こうした富裕層の大量移住は、いわば「炭鉱のカナリア」で、富や権力に関する世界の勢力図や地殻が大きく変動していることを示唆するとFTは報じている。「炭鉱のカナリア」とは、かつて坑内の二酸化炭素の増加を検知するためにカナリアを使った例の引用である。これと同様に、富裕層はこれから起こる中国の「混乱」を回避すべく、早めに移住を始めたと読めるのだ。中国の将来は富裕層の脱出によって、その危機が読み取れるとしている。

中国は、このように富裕層が住みにくい国として大挙、移住を始めた國である。そういう「リスキー」な国で直接投資を増やそうという海外企業が増えるわけがない。自社社員が、いつ「スパイ容疑」で拘束されるか分らない危険な状況下にある。直接投資が、減るのは当然である。

23年7月の「改正スパイ法」が、中国の対内直接投資がどのような影響を与えたか、その推移を見ておきたい。

<中国対内直接投資の推移(単位:億元)>

    2020年  21年   22年   23年   24年
1月   880   920  1020  1280  1130
2月    不明   850  1410  1410  1020
3月  1290  1260  1360  1400   870
4月   700   950   990   910   590
5月   690   840   860   750   520
6月  1170  1270  1590  1290
7月   630   640   750   630
8月   840   860   940   800
9月   990  1010  1110   730
10月  820   840   860   630
11月  990   990   660   530
12月 1010  1070   770   940
合計 10010 11500 12320 11300

出所:中国商務省 掲載:『ブルームバーグ』(7月4日付)

上掲のデータで、「改正スパイ法」が施行(23年7月)された8月以降の数字に注目していただきたい。23年8月からは、20年、21年、22年の前年同月をほとんど下回っていることだ。もちろん2〜3の例外はあるが、「改正スパイ法」の与えた影響がどれだけ大きいか一目瞭然であろう。

今年5月の最新データは、2020年5月のレベルさえ下回っている。ここから推測されるのは、今年7月からの「反スパイ法」強化によって、その後の中国直接投資へ与える影響がさらに大きくなる点だ。中国は、自分で自分の首を締める事態に陥っている。

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