なぜ中国の「自国通貨安=人民元安」は悪材料とされるのか?=田代尚機

2015年7月から2016年11月にかけて、人民元対ドルレートは11.8%のドル高・元安となっている。このことが中国経済に悪影響を及ぼすという見方があるが本当だろうか?(『中国株投資レッスン』田代尚機)

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人民元安は景気にはプラスのはず

少し大きな流れでみると、2015年7月の月中平均でみた人民元対ドルレート基準値は1ドル=6.1167元であったが2016年11月は6.8375元であった。この間、11.8%のドル高・元安となっている。

足元で見ると、アメリカ大統領選の結果が明らかになる前日である11月8日の基準値は6.7817元であった。12月16日は6.9508元で、この間2.5%のドル高元安となっている。アメリカ利上げ前である12月14日と16日とでは0.7%のドル高元安である。

円ドルレートの動きを見ると、11月8日の終値は1ドル=105.14円で、12月16日の終値は117.98円である。この間、12.2%ものドル高・円安が進んでいるわけだが、株価の反応を見ても、マスコミ、経済界の意見を聞いても、円安は明らかに株高の要因であり、経済見通しの改善を促す大きな要因である。

ならば、人民元安も株価、経済にとって好材料となるのではなかろうか?

貿易面では説明の余地はないだろう。短期的なJカーブ効果を除けば、人民元安は輸出を伸ばし、輸入を減らすことで貿易黒字を拡大させる。2015年における中国の貿易依存度は33.3%(グローバルノートより)で世界第178位だが、日本の28.1%(第189位)よりは高い

細かいことを気にすれば、加工貿易の状況、輸入エネルギーの依存度、輸出商品の競争力など、いろいろなことに注意を払う必要が出てくるが、「人民元安が景気(貿易収支の拡大)にとってプラスに働くか、マイナスに働くか」だけを問うならば、明らかにプラスであろう。

人民元安が中国の対外債務にもたらす影響は?

中国は対外債務が多いので、ドル高人民元安は利払い負担増となり、経済に悪影響を及ぼすといった見方がある。本当だろうか?

2015年末における中国の対外金融資産は6兆2189億ドル、対外負債は4兆6225億ドルである。多額の対外債務があるがそれ以上の資産がある。対外純資産は1兆5965億ドルに達している。ドル高は中国にとって資産の増加を意味する

日本・財務省の統計では、日本における2015年末の対外純資産残高は339兆2630億円で世界最大あった。ちなみに、第2位はドイツで195兆2360億円、第3位は中国で192兆3726億円であった。

巨額の対外純資産残高を持つ日本においては、ドル高・円安がもたらすメリットは、貿易面よりもストック面(資産評価益の発生)の方が大きい。同じ観点からドル高・人民元安の影響を評価すれば、中国においても好材料と評価すべきだろう…。

しかし、話はそう簡単ではない

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