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なぜ中国の「自国通貨安=人民元安」は悪材料とされるのか?=田代尚機

最大の懸念は「資金流出」中国人投資家はどこに逃げているのか?

2015年第4四半期から2016年第2四半期までの4半期ベースの国際収支状況を見ると、貿易、サービス、所得移転などの収支を示す経常収支は大幅黒字を維持している。しかし、資本・金融収支については、赤字が大きく、国際収支は2016年第2四半期を除きマイナスであった。

しかも、統計で把握できない資金流出(誤差脱漏)が大きく、外貨準備高は減り続けている。

本土投資家はQDIIや滬港通、深港通などを通して、海外証券投資が可能であるが、決して自由ではないし、総量ベースで国家のコントロールを受けている。にもかかわらず、2016年第2四半期の証券投資は経常収支の額を超えている。直接投資については、長らく黒字が続いていたが、ここで示した2015年第3四半期からの4四半期では3回、資金流出となっている。

資本・金融収支の項目についてもう少し詳しく見ると、目立つのはその他投資である。貨幣・預金、貸出、その他資産への投資といった形で大きな資金の流出が起きている。

これらに当局の把握しきれない資金流出(誤差脱漏)が加わり、外貨準備高の減少が続いている。

いろいろな形で資金が流出しているわけだが、日本でも為替の面だけを考えれば、資金は流出しやすいはずである。結局、ドル高がポジティブになるのも、ネガティブになるのも、すべては投資家の投資姿勢にあるのではなかろうか?

日本人とはまったく異なる中国人の行動

日本では、将来ドル高が続くと予想、実際に円を売ってドル資産を買いに出る投資家はどれほどいるのだろうか?

東京では不動産投資が活発となっており、株式市場は足元で大きく上昇しているとはいえ、預金金利は限りなくゼロに近い。なぜ日本人は預金を引き出したり、借入を起こしたり、不動産、株を売ったりして資金をねん出し、金利が高くて、通貨の価値の上がりそうな海外に資金を移そうとしないのか?

中国人は外部環境の変化に敏感で、かつ、積極的に利益の最大化を図ろうとする。たとえ、法的にグレーな方法であっても果敢に投資・投機をしようとする。

中国の金融問題は本質的なところですべて繋がっている。たとえば今話題となっている理財商品問題は、背景に現先取引を使って過度にレバレッジをかけた債券運用にある。昨年の株価バブルは法的に問題のある場外融資(証券会社の信用取引以外の形でノンバンクが投資家に高いレバレッジで資金を提供する)が蔓延したことが一因である。

不動産バブルも同様だ。潜在的な住宅需要が大きいことを背景に、法律の網を潜り抜けても大きなリスクを取って投機を行おうとする人々が絶えない。それを商機ととらえて積極的に販売しようとする不動産会社、資金を貸し出す金融機関がある。こうした点が日本とは全く異なる点である…。

Next: 実は、資金流出が中国経済に与えるダメージは大きくない!

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