ウォーレン・バフェットが投資したことにより、投資家の間で総合商社の人気が高まっています。しかし、各社の特徴についてきちんと理解している人は少ないのではないでしょうか?そこで、今回は5大商社の特徴を解説します。それぞれを一言で表すならば?という視点で分析し、そう考える理由を説明します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
三菱商事:商社の王者
- 企業規模の大きさ:売上・総資産・連結子会社全てトップ
- 事業構造のバランス:資源と非資源の割合が55:45
- ネットワーク:三菱G、セグメント間、世界ネットワークいずれも強い
まず、業界トップの三菱商事です。23年3月期の最終利益は1兆1,180億円、総資産22兆円という、とても大きな規模でビジネスを行っている企業と言えるでしょう。
三菱商事の資源と非資源の割合は55:45、ほぼ半々の非常に良いバランスです。
三菱商事の事業セグメントは10種に渡りますが、三菱商事の強みは、セグメント間のネットワークです。
出典:統合報告書
例えば、傘下に三菱自動車があります。その三菱自動車に対して、金属資源グループから銅金属を提供したり、総合素材セグメントでEV用の素材を提供するなど、自動車セグメントだけ見ても、様々なセグメントと関係があります。
このように、セグメントを超えたグループシナジーが三菱商事の強みであり、今後も様々なシナジーを利用して成長していくことが見込まれます。今後は、事業環境に対応した循環型成長モデルを掲げ、成長を加速する、としています。
様々な業界へのネットワークを活かすことで、新規投資先においてもより効果的な事業経営を行えるセグメント構造が強みです。
やはり総合商社を代表する企業、総合商社の王者は三菱商事です。
三井物産:資源に強み
- 資源利益:資源利益割合6割は業界最大
- 業績回復:資源高の恩恵をうけ、業界2位の経常利益を誇る
- 再生可能エネルギー:今後は洋上風力、燃料アンモニア、インドで大規模再エネに取り組む
総合商社業界2位の企業は、三井物産です。三井物産のセグメントを見てみると、金属などいわゆる資源系のセグメントの利益が大きいことが分かります。
出典:23年3月期 決算会説明資料より作成
23年3月期は資源高の追い風を受けて、それまで伊藤忠と競い合っていた業界2位の座を奪還しました。
主力の金属資源セグメントでは主にオーストラリア・チリなどにおいて鉄鉱石・石炭・銅鉱山などの事業に参画しています。エネルギー事業では天然ガス・LNGや石油、石炭、原子燃料などの事業投資や物流取引を通じ、エネルギー資源の確保と安定した供給体制の確立を目指している事業です。
両事業共に戦後から現在にかけて資源関係を取り扱う事業として、日本を支えてきました。今後の成長戦略である3つの軸を見てみましょう。
- クリーンな低炭素社会へのLNG(液化天然ガス)や再生可能エネルギーなど次世代エネルギーとなるアンモニアや水素などへ移行するための案件を進める
- ヘルスケアや、病気を未然に防ぐ“未病”の分野。アジアで病院事業を手掛けているが、チャンスがある。
- 国内外のサプライチェーンの高機能化
(1)のクリーンエネルギーへの移行は、総合商社業界全体の課題であり、今後成長性が見込まれる領域です。そこに注力するのは三井物産の事業構造を考えて、合理的です。