今回は証券会社で会った、投資に失敗して怒る投資家の発言で気づいたことです。末期がんの宣告を受けた私が、若い甥に伝えたい資産形成のヒケツを書いています。(『億の近道』石川臨太郎)
投資に失敗して証券会社の社員を怒っていた親父さんに学ぶ
メルマガ『億の近道』編集部より
この特別コラムは、石川臨太郎氏が治療の合間に書き下ろしたものです。現在闘病中のため、定期的に掲載できるかどうか分かりませんが、気力体力の続く限り書けるときに書きたいとの意思ですので、寄稿があったら掲載するというペースで続けたいと思います。ぜひご愛読下さい。
なお、コラムの感想や石川臨太郎氏への励ましのメッセージなどがあれば、投稿フォームを開設致しましたので、ぜひご利用下さい。
自分の行動の結果起こったことを自分の責任だと考える
サラリーマン時代、仕事中に売買することができなかったので、毎日お昼休みに証券会社に出かけて、クイック(QUICK端末)をたたくのを楽しみにしていました。
その証券会社に、いつも投資の失敗を証券会社社員のせいにしている60歳くらいの親父さんがよく来ていました。そのやり取りが聞こえてくるので親父さんの愚かさを笑っているうちに、はっと気がついたんです。
「あれ、この親父さん、誰かに似ている。え、私に似ているじゃないか」と冷や汗が出てきました。
この親父さんが、その証券会社に初めて来店してきたときも、たまたま私は居合わせていました。奥さんと一緒にやってきて、いままで取引していた野村證券のことをぼろくそに罵っていました。
そのうちに、今度はいまの取引先のその証券会社の社員を罵っている場面に出くわしました。
『あんたは一度も私を儲けさせたことがない。トヨタ自動車を買おうかと君に話したとき、君はまだまだ下がるといった。お客様にこれ以上損をさせたくないといった。でもあれが大底だった。また信越化学工業をもう売ろうと言ったとき、君はまだまだ上がると思うと言った。それで私は売ることができなくなった。証券会社の専門家の君が言うことだから、私は君の言葉を信じた。どうしてくれるんだ!…あんたじゃ話にならん。支店長を呼べ!』
実はトヨタ自動車の株を買う話のときも、信越化学工業の株を売る話のときも、私はたまたま会話を店頭で聞いていたのです。何しろ、お昼休みには証券会社の店頭に行くのを日課にしているのですから。
しかも、このお客さんのだみ声は大きくてロビー全体に聞こえてくるのです。
たしか、トヨタ自動車の株を買う話のときは、私もトヨタ自動車の株が下がるたびに買い増しをしていたので興味深く聞いていました。私もさすがに怖くなって買い増しできないでいたので、証券会社の社員の意見も無理はないかなという感想で聞いていました。
しかしトヨタ自動車の株価は、その近辺で下げ止まり反転を開始しました。
親父さんはトヨタ自動車の株を買いたいとは言ってはいませんでした。「トヨタ自動車の株を買うのはどう思うか」と聞いていたのです。
たしかに証券会社の社員は「今は買うべきではない……」と理由をいくつも並べて説明していました。
でも買わないという判断をしたのはこの親父さんでした。
信越化学工業の株のときも「信越化学工業の株を売ってくれ」とは言っていませんでした。これまた意見を求めていました。「信越化学工業はそろそろいい値段になったけれど、売るのはどうだろうか」。
たしかに証券会社の社員は自分の意見として、まだまだ信越化学工業の株価が上がると思うという理由を述べていました。
でも売らないという判断をしたのは、やはりこの親父さんでした。
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