株価が大きく上昇しているダイキン工業<6367>を分析します。決算が発表された翌日に株価が一時15%近く上昇して注目を集めました。いまダイキン株は売るべきか、買うべきか。決算で見るべき2つのポイントを紹介しながら、長期投資家の目線で分析していきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
ダイキンの決算はどうだった?
まずは株価の動きを見てみましょう。
24年5月9日に決算が発表され、翌日の株価は一時15%近く上昇しました。
直近では1万9,000円以下をつけていたこともあり、この1週間前後で株価が30%近く上昇していることがわかります。
これを見るとビッグサプライズがあったように見えますが、業績はどうだったのでしょうか?
24年3月期の実績は売上会社予想4兆2,400億円に対し、売上実績約4兆4,000億円を達成しクリア。営業利益は予想4,000億円に対し、実績3,921億円です。わずかに予想に届きませんでした。
実は、24年3月期のダイキンは、かなり苦戦していました。
- インフレ長期化による耐久消費財の需要減少
- 利益率の高い欧州環境配慮型空調の需要減少
- 米国住宅投資の減少に伴う在庫調整の影響
これらの影響で需要が想定を超えて減少したシーズンでした。
3Q時点では、「今期の目標達成はかなりハードルが高い」などといった発言もあり、事業環境の厳しさが露呈していました。
しかし、最終的にはなんとか決算をまとめてきたのです。
そして、同日発表された25年3月期の業績予想を
売上高前年比3%増の4兆5,400億円、営業利益前年比8%増の4,250億円としました。
決算を受けて株価が短期的に上昇した理由は
「23年度3Qまで厳しかったのに、4Qは回復して今期も悪くなさそうじゃん」
このようにまとめられるでしょう。今期の見通しを見る上で、どのような点に注目すべきか、ダイキンをもう少し詳しく分析します。
ダイキンを見るうえでの重要なポイント
ここからはダイキンの事業内容を解説します。
ダイキンは、空調事業と化学事業、その他の3つの事業がありますが、主力はなんといっても空調事業です。売上高の推移を事業ごとに分解すると、空調事業が成長を牽引していることがわかります。
出典:決算短信より作成
さらに分解して考えます。空調事業の売上を地域ごとに分けてみましょう。
出典:決算短信より作成
これを見ると、最大の収益源が米州、次に欧州があり、日本などアジア地域が続きます。
つまり、ダイキンの重要なポイントは米国市場や欧州市場の動向なのです。
これを詳しく分析することで、なぜ株価が上がったのか?
今から投資するべきなのか?がわかります。