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公的マネーが東証1部上場企業の8割で大株主の異常さ。日銀膨張の末路は=原彰宏

日銀が市中国債を買い、直接マーケットで株を買っている現状は、もう異常を通り越した状況と言えます。「異次元の金融緩和」と表現している通り、異次元も異次元、前代未聞とも言えるでしょう。この膨張する日銀のあり方を検証することで、「日本は大丈夫か?」という観点で、日本という国の行く末を考えたいと思います。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年11月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

大株主「日本銀行」

日本には企業が約4,000万社あります。そのほとんどは中小企業です。

かつては企業を起こせば上場することがステイタスでした。中でも東京証券取引所1部上場は大企業の仲間入りで、誇らしいものでした。

いま東京証券取引所(東証)1部上場企業は2,131社あります。そのうち、日銀や年金資産など、公的マネーが大株主となっている企業は1,830社になるそうです。

つまり、約8割もの企業の大株主が、日銀や年金となっているのです。

大株主の定義は、発行済株数の5%超を保有している人・企業・団体です。公的マネーとは、日本銀行と年金を運用してるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。

企業が証券市場に上場している株を買えば、誰もが株主になります。株主総会の案内が送られてきますし、企業決算報告書が送られてきます。配当が出ればもらえますし、株主優待があればもらうことができます。

日銀は、直接企業の株を買う個別銘柄投資ではなく、ETFという商品を買います。上場投資信託と呼ばれるもので、主に東証株価指数(TOPIX)に連動する商品を買っています。東証1部を構成する銘柄で造成されているのがETFです。つまり、東証1部上場の企業集合体のようなもので、その企業とは日本の名だたる企業ばかりがラインアップされています。

ETFを買うことで、間接的に企業の株を買うことになり、株主になることになります。ただし配当金や株主優待はありません。まぁ、日銀がそんなものを求めるわけではないですけどね。

まずは日銀の異次元金融緩和の推移を、ETF購入に限ってみてみましょう。

どんどん膨れ上がる日銀「ETF購入」

日銀が海外にも例のない、直接マーケットに手を突っ込んで株を買うということを始めたのは2010年10月です。あくまでも緊急措置だったのでしょう。当時は民主党政権でした。

それが恒常化していったのは、黒田東彦氏が日銀総裁になってからで、自民党が政権を奪取したときです。安倍政権の掲げた看板が「デフレからの脱却」、日銀黒田総裁の看板は「物価目標2%」実現でした。これに縛られたのでしょうね。

経済復活のバロメーターを株価に合わせ、株価を上げることこそが景気回復の道と定め、「トリクルダウン」を信じて株価引き上げに必死になっていきました。

国債買い入れだけでなく、ETFとJ-REIT(不動産投資信託)を直接日銀が買い入れる政策を押し進めたのも、ひとえに株価を押上げ、不動産価格を下支えすることで、世の中をインフレにしていくとしたのです。

ETF購入額単位が、「億」から「兆」へと変わりました。

黒田バズーカと呼ばれる金融政策は、安倍政権公約の消費税率引き上げ(8%から10%)実施による景気腰折れを防ぐために、消費税率引き上げ実施前日の2014年10月末に「黒田バズーカ2」を放ちました。それまでのETF購入枠年間1兆円を、一気に3兆円にまで膨らませました。

ところが翌日、安倍総理(当時)は消費税率引き上げを見送りました。もうここからは「毒をくらわば皿まで」の心境か、事あるごとにETF購入額上限は引き上げられ、3兆円が倍増の6兆円になり、今年はコロナによる景気後退を懸念して、ETF購入額はさらに倍の12兆円にまで引き上げました。

「億」の単位から始まったETF購入は、緊急事態措置という位置づけから株価を支える常套手段となり、とうとう12兆円にまで購入額は膨らんでいったのです。

日銀がブランド企業を買い支えている…といった状況です。

日銀が大株主となった企業は以下のとおりです。上位数社だけですが、2020年3月末時点の間接保有割合と間接保有額を列挙します。

・アドバンテスト(半導体):23.41%(2,028億円)
・ファーストリテイリング(ユニクロ):19.56%(9,167億円)
・TDK(電気機器): 18.96%(2059億円)
・太陽誘電(CD-Rなどの記録メディア):18.55%(691億円)
・東邦亜鉛(非鉄金属):17.87%(29億円)
・ファミリーマート(コンビニ):16.93%(1,663億円)

このままETFを買い続けたとしたら、ETF構成銘柄である上記企業の日銀保有割合も増え、アドバンテストの場合、2021年3月末時点では25.49%になる予想です。

上記、東邦亜鉛までは2021年3月末時点で保有割合は20%を超える計算となります。

Next: 下がっても政府が買い支えてくれる。やがて日銀は後に引けなくなった

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