菅政権は安倍政権に引き続き、若年層の支持率が高いという調査結果が出ています。若者たちは支持政党が持つ国家観と、それに影響を与える支持団体の存在を理解しているでしょうか?(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
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目次
- 若者に支持される自民党
- 本当に若者に優しい政策になっているか?
- 国の役割とは?
- 国家観を見ずに「エサ」に飛びついてはいけない
- 支持団体の意向次第
- 現政権の国家観に影響を与える「日本会議」
- 日本会議を理解するキーワード「保守」とは?
- 新興宗教「生長の家」が“大もと”
- 菅政権も「日本会議」と密接な関係にある
- 日本会議が目指す社会とは?
- 政治は私たちの未来を作る、政治家を選ぶのは私たち
若者に支持される自民党
公職選挙法の選挙権年齢が、20歳以上から18歳以上に引き下げられました。18歳といえば、就学生で言えば高校3年生ですね。
彼らにすれば、政治を意識したときからずっと安倍政権だったので、安倍晋三前総理しか総理大臣を知らないということになります。それが、「7年8ヶ月」という長期期間が意味するところでもあります。
高校3年生と言えば、大学進学希望者には受験が待っています。この学年の受験から、今までのセンター試験とは違う新しい共通テストが始まります。
公明党は、コロナ禍ということで、各受験生に一律2万円を共通テスト受験代として支給することを提案しています。共通テスト受験目的であれば、受験料そのものを無料にするほうが事務作業や経費の面からも合理的と言えるのですが、あえて現金給付にするのは、18歳の有権者に、政権与党を強く意識してもらうためではないかという憶測もあります。
一般的に、最初に投票した政党を、その後の投票でも支持するという傾向があるとも言われています。共通テスト受験のための振り込みは、もうすでに終わっているのですがね。
自民党は、若者層の支持が大きいことが統計からも示されていて、それを背景にした若者層へのアピールだとするなら「いかがなものか」と思いますね。
とにかく、目先の利益、それも生活に身近なメリットを前面に出すことで支持を得ようとする動きを、有権者はどう考えるのでしょう。
本当に若者に優しい政策になっているか?
菅政権は、発足して1ヶ月以上も国会で所信表明をしませんでした。「携帯料金値下げ」は、たしかに国民受けの良い政策で、とくに若者層には受け入れられやすい政策ではありますからね。
「木を見て森を見ず(物事の細部にとらわれると、全体を見失う)」という意味で、細部に拘ると、ものごとの本質を見誤るというものです。
同じような表現で「鹿を追う者は山を見ず」というのがあります。鹿を捕えようとしている者は、獲物にばかり気を取られて山全体のことが目に入らなくなってしまうことから、目先の利益を追っている者は、それ以外のことが見えなくなり道理を忘れてしまう…という戒めの意味があります。
大事なのは「目の前の優位性」ではなく、「将来の安心」をどうするのかにあります。
国の役割とは?
国の役割とは何か。会社組織で考えてみましょう。
会社運営のためにお金を稼いでくるのが「営業部門」、お金を生み出すための製品を作るのが「製造開発部門」、そしてお金を稼ぐための業務潤滑を担う「総務・人事、経理部門」、顧客サポートの部門もあるかもしれません。クレーム処理も、お金を稼ぐ大事なお仕事です。
これら直接お金を稼ぐことに関わる部門とは別に、社長や役員たちの「管理部門」があります。彼らの仕事は対外折衝、つまり他社や業界団体・行政などとの交渉です。会社を代表する責任者という存在です。同時に、会社のお金に関する責任もあります。広報や株主総会など、社外に向けての説明義務もあります。
従業員にとって求められる政策は、待遇改善であり、さらに給料アップにつながれば嬉しいですね。
経営者にとっては会社経営のために、法人税減税や業界全体の規制緩和が求められます。
会社役員は、直接お金を作りはしないですが、従業員が会社の業績を上げやすいように、対外折衝などでサポートするのが仕事です。従って、従業員の待遇改善も役員の仕事です。
これを国家に当てはめると、「管理部門」は政権(内閣)が担います。総理大臣が国家の社長で、さしずめ各大臣は役員(取締役)といったところでしょうか。
国家(いわゆる政権)が行うことは、お金を直接稼ぐのではなく、国民が安心して働くことができ、安全に生活できるように以下を行います。
•外交(国を代表した対外折衝)
•安全保障(国の安全、国民生活の安全)
•お金(税金)の管理と分配(生活保障等)
国民を代表してこれらのことを行うので、その方向性をしっかりと国民に示すことが大事で、それにより私たちは、国が、現在の、そして将来の私たちの生活をどのようにしてくれるのかを判断することができるのです。
それが、政権の支持・不支持を決める材料になるのです。
国家観を見ずに「エサ」に飛びついてはいけない
私たちの生活を、将来どのように導いてくれるのかというのが「国家観」です。
政権が示す「国家観」に基づいて、各省庁が方針を決め、そのための法律を国会で審議します。それを具体的に私たちにサービスとして提供するのが行政・役所になります。
携帯電話料金値下げ要請は「国家観」ではなく、会社で言えば、社長が「ダンピングしてでも安売りして売ってこい」と音頭を取っているようなもので、会社展望や営業方針を打ち出しているものではありません。目先の売上を上げるための、社長としての決断を述べているに過ぎません。
会社のためにお金を生むのは「営業部門」であり「製造・研究部門」であって、「管理部門」はお金を生みません。営業や製造がお金を生みやすいように対外折衝や行政との交渉に動くのが管理部門の役目です。
国家も同じです。お金を生む(納税)のは国民で、国は、国民が安心して生活できるように動くことなのです。
政党ごとに「国家観」があります。それを見比べることで、どの政党に、私たちの未来を託すのかを判断します。