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若者こそ知るべき日本会議と菅内閣の関係。彼らは自分の敵か味方か?=原彰宏

日本会議を理解するキーワード「保守」とは?

さて、ここで、日本会議を理解する上での「保守」の考え方を整理しておきましょう。

学者でも研究者でもないので、正確に説明できると言えるほど思い上がってはいませんが、「保守」を軍国主義とか戦前社会復興といったイメージに縛り付けるのはいかがなものかとは思います。

保守と言えば評論家の西部邁(にしべすすむ)氏がすぐに思い浮かびます。西部氏の雑誌投稿記事にお知恵を拝借しながら、保守というものを整理してみましょう。

「保守」という言葉は「保ち守る」で、何を保って守るのかと言えば、いろんな人の表現を総合すれば、概ね「日本の伝統」とか「秩序」という言葉に落ち着きそうです。

まだ漠然とはしていますが、社会的、政治的、宗教的という言葉を「伝統」や「秩序」ということばの前につけるとイメージしやすいですかね。

こういうときは対局にある言葉から攻めていくのが良いです。

「保守」の対局にあるものは「革命・革新」です。急進的な革命に反対する立場が「保守」だと言えば、少しはイメージが鮮明になってきたでしょうか。

西部邁氏の言葉によれば、革命は、「人間は間違わない、理性は正しい」ということが前提にあり、その上で理性と合致した社会を設計すれば理想社会が実現できるという考え方にあるとしています。

一方「保守」は、「革命・革新」とは前提が違っています。「保守」は、人間の完成可能性への懐疑が前提にあります。つまり、人間は道徳的にも認識的にも不完全性を免れないのだから、自分が思い描く理想だけで大変革をすると取り返しがつかなくなるという姿勢が「保守」であると、西部氏は語っています。

だから(「自然的」と定義している)社会に人工的な改革を加えると、社会そのものがおかしくなるとしていて、改革という言葉の対局に「伝統的な精神を守る」というものを位置づけているようです。

著述家の菅野完氏は、自身の保守観を「人間はまちがう生き物だから過去に学ぶべきだ」「歴史には必ず答えがある」として「だから伝統には真摯に向き合うべきだ」としています。

革新派に言わせれば「現代でも人間はまちがうのだから過去に行ったことも決して正しいとは言えない」という立場のようですね。

ちょっと哲学色が強くなってきましたが、この前提を踏まえて「日本会議」というものを見ていきましょう。

新興宗教「生長の家」が“大もと”

日本会議のホームページには、「前身団体である『日本を守る国民会議』と『日本を守る会』とが統合し、平成9年5月30日に設立された全国に草の根ネットワークをもつ国民運動団体」とあります。

「日本を守る国民会議」は、憲法改正や日本核武装を主張しているグループであり、「日本を守る会」は神道系宗教団体となっています。

ホームページにある日本会議の説明文に、これまでの国民運動の内容の一端が紹介されています。

・明治・大正・昭和の元号法制化の実現
・昭和天皇御在位60年や今上陛下(現上皇)の御即位などの皇室ご慶事をお祝いする奉祝運動
・教育の正常化や歴史教科書の編纂事業
・終戦50年に際しての戦没者追悼行事やアジア共生の祭典の開催
・自衛隊PKO活動への支援
・伝統に基づく国家理 念を提唱した新憲法の提唱

など、30有余年にわたり正しい日本の進路を求めて力強い国民運動を全国において展開してきたとあります。これら誇示している実績から、おおむね日本会議の全体像が見えてきそうですね。

「美しい国」「誇りある国づくり」という言葉が日本会議の中心にあるようで、これらの言葉は、安倍前総理が国家観を語るときにも使っていました。支持団体が、政党の(政治家の)国家観に影響する例かと思います。

ここまで見てきた通り、日本会議は「保守」です。

日本会議の綱領は、
・我々は、悠久の歴史に育まれた伝統と文化を継承し、健全なる国民精神の興隆を期す
・我々は、国の栄光と自主独立を保持し、国民各自がその所を得る豊かで秩序ある社会の建設 をめざす
・我々は、人と自然の調和を図り、相互の文化を尊重する共生共栄の世界の実現を寄与する
とあります。

「自然」という言葉が出てきますが、西部氏の「社会は自然で、人工的な改革を加えるものではない」という保守解説と合致しそうですね。伝統と文化の継承は、まさに「保守」の理念そのものです。

戦前社会回帰を彷彿させるものとして、「独立国家」としての国民の気概を訴えています。

設立趣意書の中には、「東京裁判史観の蔓延は、諸外国への卑屈な謝罪外交を招き、次代を担う青少年の国への誇りと自信を喪失させている」「世界有数の経済大国を誇った我が国も、かつての 崇高な倫理感が崩壊し、家族や教育の解体などの深刻な社会問題が生起し、国のあらゆる分野で衰退現象が現出しているのである」と現状を憂いているようです。

日本会議は、新興宗教である「生長の家」がその“大もと”となっていて、「生長の家」の主張を多く引き継いでいます。

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