新型コロナウイルスの影響で株価が大幅に下がっていますが、私は十分な反動があると考えています。もっとも、それまでの企業業績・経済指標はひどいものになるでしょう。しかし、それで株価が下がるのなら、その先の回復を考えるとこんなに良い「買い場」はありません。私はこれから時間をかけて大きく買うでしょう。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
ダウ平均は過去最大の下げ幅→過去最大の上げ幅へ
株価が大幅に下がっています。新型コロナウイルスが世界に波及していることが鮮明となり、市場のリスクオフムードはピークに達しています。
これまで堅調を保っていたダウ平均も下げ続け、2月27日には過去最大の下げ幅を記録しました(編注:原稿執筆時点3月1日。そして3月2日、ダウ平均は今度は過去最大の上げ幅となる1,293ドルの急反発が起きています)。
日本では、突如小中学校・高校の休校が要請されるなど、パニック状態となっています。すでに多くの人が相場や経済状況に対し悲観的になっています。
しかし、私はこれから将来に対して極めて楽観的です。だからこそ、この機会に割安になった株式をどんどん買いたいと思っています。過去の歴史からみると、これだけ下がった時は間違いなく大きなチャンスとなっているからです。
楽観的なのは、単に精神論の話だけではありません。経済的にもプラスの要素が大きいと考えています。
世界が悲観に包まれている?
経済は、需要と供給のバランスで成り立っています。これが崩れる時、景気の変動が起きるのです。すなわち、「需要>供給」となれば景気回復、「需要<供給」となれば景気後退が引き起こされます。
この12年の経済を振り返ると、2008年のリーマン・ショックで人々の心理が過度に悲観的になり、需要が極端に落ち込みました。「需要<供給」となり、100年に1度と言われる大不況が訪れたのです。
各国はこれに対応するため、大幅な金融・財政出動を行いました。日本も遅ればせながら2012年末からこれに続き、「アベノミクス」が出現して株価がようやく回復しました。
この時、2011年3月に発生した東日本大震災の影響で、復興のための建設需要も高まっていました。さらに東京オリンピックも決まったことから都心部の再開発が加速し、需要が持ち直したのです。この需要にあわせて景気が拡大してきたのが、アベノミクスの本質です。
世界的には2007年のiPhone発売を皮切りに、スマートフォンの需要が爆発しました。関連業界は一気に伸び、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などの巨大企業を生み出しました。
しかし、近年はその動きも怪しくなっていました。スマートフォンの普及率は先進国で8割となり、出荷台数も頭打ちです。国内の建築需要も復興が進み東京オリンピックが近づくにつれて落ち着いてきます。
それでも株価が持ちこたえていたのは、世界的な金融緩和があったからです。市場にお金が溢れているので、上がっている資産があればお金がそこへ群がります。
実体経済でも、金利が低いことから必要かどうかわからないものにまで投資が行われ、「仮想」の需要が発生していました。ソフトバンクグループのビジョン・ファンドなどが良い例です。
このような幻想はやがて崩れ去ります。私はそれを警戒し、市場の先行きを慎重に見ていました。
そこで今回の「新型コロナショック」です。
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