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唐揚げ店“前年比7倍”の倒産数に。「低資金で開業可」「未経験でも簡単」等の甘言に踊らされ死屍累々の山を築くお決まりパターンに広がる冷淡な反応

一時は出店ラッシュだったものの、近年は閉店する店が相次いでいるとされていた唐揚げ専門店。帝国データバンクの調査によれば、2023年の倒産数は前年に比べて7倍に達するなど、退潮ぶりが鮮明となっている。

報道によると、2023年の唐揚げ店の倒産は11月までに22件発生。年間の倒産件数として初めて10件を超え、これまで最多だった21年(6件)を大幅に上回って過去最多を更新したとのこと。ただし、水面下の閉店などを含めれば、23年はより多くの唐揚げ店が市場から淘汰されたとみられるという。

唐揚げ専門店が苦境に陥っている原因としては、唐揚げ店そのものの急増による競争激化にくわえ、節約志向の広がりによりスーパーやコンビニの唐揚げと比べ高価な専門店が敬遠されている状況も影響しているとのこと。

さらに輸入鶏肉や食用油といった唐揚げに欠かせない食材の価格が、ここ数年で1.5~2倍に高騰する反面で、もともとB級グルメというイメージが強いなどの理由で、大幅な値上げは客離れの懸念もあり難しいという点も、経営難を招く原因となっているようだ。

韓国「チキン屋」と“周回遅れ”の顛末に

今年7月には今回と同じく帝国データバンクによって、今年上半期時点ですでに倒産数が9件と、過去最多にのぼるとされていた唐揚げ専門店。今回公表された2023年11月までの倒産数は22件ということで、下半期もその数はよりハイペースで増え続けたようである。

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もともと2010年代の中食ブームによって店舗が増え始め、さらにコロナ禍におけるテークアウト需要の高まりが、店舗数の爆発的増加に繋がったとされる唐揚げ専門店。何よりも店舗増を後押ししたのが、その参入障壁の低さだ。

テイクアウト専門店となればテナントの広さもさほど必要なく、また厨房機器もフライヤーぐらいでOKということで、一般的な飲食店などと比べてもかなり少ない資金で開業が可能。さらに、テイクアウト専門店だと「調理師免許」は不要で、1日間の講習で取得できる「食品衛生責任者」の資格があればOKだという。

このように数百万程度の資金があれば、誰でも気軽にすぐ始めることが可能だった唐揚げ専門店だけに、あっという間に市場自体が飽和してしまい、先述の通り同業同士での消耗戦が泥沼化していったというわけだが、いっぽうでお隣の韓国では、日本の唐揚げ専門店ブームよりも早いタイミングで、いわゆるチキン屋の新規開店が相次ぎ、一時は約8万7,000店まで増えたものの、あまりの飽和状態のため年間8,000店以上も廃業するといった事態に陥ったことが。

日本で唐揚げ専門店が加速度的に増えていった際、一部からはいずれそんな韓国のチキン屋と同じような顛末をたどるのではないか……といった声も少なからずあがっていたわけだが、昨今の唐揚げ専門店の倒産急増の話を聞くに、まさに案の定といった展開となっているようである。

高級食パンチェーンでは本部とFCが大揉めのところも

このところは唐揚げに限らず様々なフードが、一時には爆発的な人気を得るも急速に人気が衰えるといったムーブを繰り返しているところ。

例えば、2018年以降に第3次ブームが始まったとされるタピオカに関しても、今年9月にタピオカミルクティー店「comma tea」が破産するなど、そのブームは終焉に向かっている状況。

さらに高級食パンに関しては、さらにひどい有様となっているようで、同ブームを牽引する存在だった「乃が美」において、本部とフランチャイズ店オーナーの間で、上納するロイヤリティの見直しなどを巡って激しく対立。

本部側はロイヤリティを支払わなければフランチャイズの契約解除も辞さない強硬姿勢を取るのに対し、一部のフランチャイズ側は本部を訴える動きに出るなど、まさに泥沼の様相となっているのだ。

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このように唐揚げ専門店もそうだが、結局のところ「少ない資金で開業可能」「経験なしでも簡単」「月〇〇万稼げる」などといった、フランチャイズ商法におけるいわば常套句にまんまと乗せられた人たちが、最終的に死屍累々の山を築いて終わるというのが、この手のブームのお決まりのパターンといったところ。それだけに、今回の“倒産急増”といった報道に対しても、世間の反応はいたって冷ややかといったところのようだ。

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