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高級食パン「乃が美」の都内8店舗が“離脱”。高単価路線を巡って対立? 東京進出は46都道府県目と慎重だった過去も“悪い予感”が的中か

日本全国に展開している食パン専門店「乃が美」の都内にあった8店舗が、今年6月末から7月上旬にかけて閉店したと報じられたことが、SNS上などで大いに取沙汰されている。

報道によると、閉店したのは株式会社MTKが運営していた都内の8店舗。MTKはこれまで、乃が美ホールディングスと事業継続について長期間にわたって協議してきたものの、事業の継続が困難となったとして、運営店を相次いで閉店したという。

同社は乃が美の加盟店を卒後し、今後は新しい食パンをコンセプトにした次世代パン業態「白食ぱん花水木」を順次開店させるとしている。

離脱した店は“脱・高級”パン屋に様変わりか

5~6年ほど前から大いに盛り上がっていた高級食パンのブームだが、その手の店が都心部のみならず地方でも乱立したうえに、最近では主原料である小麦価格の高騰もあって、オープンしても短期間で閉店するケースも増加していると報じられていた。

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元々、従来の食パンと比べても妙に甘い味わいやその柔らかさ、また何よりも日々おいそれとは買えないような強気な価格設定に対して、思うところがある消費者は多かったようで、SNS上では「高級食パンブームもいよいよ終焉か」との声が、ここぞとばかりあがる展開に。

今回報じられた乃が美の8店舗閉店に関しても、多くはそれと同様のノリで語られているようで、なかには「乃が美全店が閉店する」と誤読している向きも一部には存在するようだ。

実際のところ、今回閉店した8店舗を運営していた企業は、今後新たなブランドの食パン店を展開させていくとのことで、今回の出来事がいわゆる高級食パンブーム全体の終焉を裏付けるものかどうかといえば、少々微妙といったところ。

ただ、その新ブランドはリリースで「高級かどうかはお客様が判断すること」「“高級”ではなく“価値のある”商品づくりに専念する」などと謳っており、既存の高級食パンブームに対しては、かなり懐疑的なスタンスを取っている模様だ。

価格のほうも、乃が美のレギュラー(2斤分)が800円を大きく超えることで有名なのに対し、新ブランドはレギュラーサイズの白食ぱんや山型食ぱんが税込450円ということで、乃が美の価格帯とはかなりの差が。報道にあった乃が美との「事業継続についての長期間にわたる協議」が、結果的に物別れに終わった理由も、どうやらこのあたりにありそうである。

東京への進出は46都道府県目だった理由

いっぽうで乃が美のホームページを見ると、閉店した8店舗はすでに店舗一覧から削除されており、東京都内は別のオーナーによる経営である「はなれ」11店舗を含む13店舗が表示されているのみ。都内にあった店舗の4割近くが、今回の件で一挙に閉店することとなったようだ。

2013年、大阪府内に総本店をオープンさせた乃が美は、その後は高級食パンブームにも乗って順調に店舗を拡大。2020年6月の秋田県内への出店で全国47都道府県制覇を果たしたのだが、実は46都道府県目の出店となったのは東京都だったという。

東京への進出がこれほど後になった理由に関して、乃が美の代表は「じらすだけじらして、満を持して東京進出する、という作戦だ」と答えていたという。激戦区の東京で失敗してしまうとブランドが傷ついてしまうとも考えられ、ゆえに他の道府県へ先に進出し、東京進出の機運が高まったところで出店しようと考えていたというのだ。

実際、2018年11月の麻布十番店オープン後は、都内でも順調に店舗数を増やしていた乃が美。しかし今回の出来事により、そんな進出前の“悪い予感”が図らずも当たってしまう格好となったようだ。

高級食パンと同じく“食”絡みのブームで語られる他のものだと、コロナ禍のテイクアウトブームに乗って乱立傾向だった唐揚げ専門店が、ワタミが手掛ける「から揚げの天才」に閉店が相次いでいるなど、早くも青色吐息といった状況。SNS上では、食パン専門店に関しても同様の道を辿るのではとの声が根強いが、そういった面で今回の乃が美からの“大量離脱”が、今後どのような影響を及ぼすのか、大いに気になるという向きは多いようである。

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