中国経済の衰退の道がはっきりと見えてきた。土地バブル崩壊、ゼロコロナ徹底による消費圧殺、高齢化社会への突入など良いところがまったくない。革命に慣れた中国では、習近平の失脚があってもおかしくないところまで追い詰められている。『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)
※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年1月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
崩壊が始まった中国経済
中国のGDP統計が発表された。21年の実質経済成長率は、前年比8.1%である。
その限りでは、高い成長率という評価になるが、四半期別に成長率推移を見れば、ゾッとするような急激な右肩下がりの成長であった。参考までに、四半期別成長率を示したい。
<21年四半期別成長率推移(前年同期比)>
1~3月期:18.3%
4~6月期:7.9%
7~9月期:4.9%
10~12月期:4.0%
上半期は、パンデミック下で前年同期が低成長で「ベース」が低かったので、高い成長率になったもの。いわば、形式的な高い成長率と言える。ところが、下半期になると事情は一変する。4%台へ低下している。
注目点は、この4%台の成長コースが、22年経済にそのまま引継がれるリスクである。22年に入って改善を期待される需要項目が見当たらないのだ。
今年の中国経済が、深刻な事態に向かっていることは明らかである。
「人口世界一」からまもなく転落、綱渡りの経済へ移行する
前記の短期的な経済問題に加えて、さらに大きな問題が浮上した。
21年の出生数が1,062万人と、1949年の建国以来で最低水準へ落ち込んだことだ。一方、死亡者は1,014万人と出生数と接近している。
こうして、昨年の「自然増」は48万人にすぎず、今年から「自然減」は不可避の状況になった。世界一の人口大国である中国が、ついに「人口減社会」へ突入する。この経済的、政治的インパクトは極めて大きいのである。
これまで2027年ごろに、インドの人口が中国を抜くと見られてきた。だが、中国の予想以上に早い人口減入りによって、世界の人口トップの座はインドへ移る時期が早まる見込みである。
中国は、これまで「世界一」の人口を誇ってきた。そのプライドが消え、同時に低水準の経済成長率が恒常化すれば、中国経済は一挙に「老齢期」を迎える。もはや、「元気溌剌」な経済は昔話になり、これからは常時「年金財政破綻」を気にしながら経済運営する綱渡りの経済へ移行するはずである。